1. 1、XのYへの請求は、所有権(206)に基づく物権的返還請求である
1.1. この請求が認められるためには、①X所有②Y占有が必要であるが、これは認められる
2. 3、したがって、正当な占有権原が認められるので、請求不可
3. 2、そこでYは反論として、甲を占有すべき正当な権原として、甲賃借権(601)を主張
3.1. ⑴まず、YはAY間賃貸借契約を主張する
3.1.1. しかし、Aは甲に関し何ら権限なく、原始的不能
3.1.1.1. 契約自体はAY間で有効である(412条の2第2項参照)ものの、契約当事者でないXはこの契約に拘束されない
3.1.1.1.1. よって、主張不可
3.2. ⑵そこで、Yは賃借権の時効取得(162条1項、163)を主張
3.2.1. ア、賃借権の時効取得は可能か
3.2.1.1. (ア)債権は一回的給付を通常予定するものであるから占有が観念できず、「所有権以外の財産権」(163)に当たらないのが原則
3.2.1.2. もっとも、不動産賃借権は物の使用収益を目的とするものであり占有が観念できる点で、地役権(280)などと共通する
3.2.1.3. そこで、不動産賃借権が継続的に行使され、かつ、外形上認識することができ(283参照)、賃借の意思に基づくことが客観的に示されている場合、「所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって…行使する」(163)の要件を満たすと考える
3.2.1.4. (イ)Yによる不動産賃借権は22年という長期間にわたって継続的に行使され、これは乙建物を通じた甲占有という形で外形上認識することができた。
3.2.1.4.1. そして、YはAにその間賃料を支払っており、その賃借の意思は客観的に示されていた
3.2.1.5. よって、Yは「所有権以外の財産権を、自己のためにする意思をもって…行使する者」といえる
3.2.2. イ、そして、Yは甲土地を乙建物を通じて「占有」しており、「平穏に、かつ公然と占有」したものと推定(186条1項)
3.2.2.1. したがって、Yは期間以外の163条の要件は充足する
3.2.3. ウ、Yが不動産賃借権を行使すべき期間
3.2.3.1. (ア)占有者Yは占有開始時に「善意」と推定される(186条1項)
3.2.3.1.1. しかし、甲の登記を確認すればAが甲所有者でないと容易に把握できたにもかかわらず、これを怠ったので「過失がなかった」とはいえない
3.2.3.2. (イ)よって、Yは不動産賃借権を取得する期間は短期(162条2項)ではなく長期(同1項)が適用
3.2.3.2.1. そして、Yはこれを充足する
3.2.4. エ、したがって、Yの主張は認められる