1. 1、XのYに対するXY間利息特約(589)付き消費貸借契約(587)に基づく残元本及び遅延損害金支払い請求
1.1. ⑴要件
1.1.1. ア、2020・12・14契約締結
1.1.1.1. 返還合意
1.1.1.2. 金銭交付
1.1.1.3. 利息・遅延損害金の合意
1.1.2. イ、返還時期
1.1.2.1. 弁済期を上記1年後とする返還時期の合意
1.1.2.2. 現時点(2028・10・10)で2021・12・14の到来・経過
1.2. ⑵請求可に思える
2. 3、したがってX請求不可
3. 2、Yとしては以下の反論をする
3.1. ⑴弁済期(2020・12・14)を起算日とする消滅時効(166条1項)の成立
3.1.1. ア、「五年」経過し時効完成(同1号)
3.1.1.1. Yによる時効の援用(145)
3.1.2. イ、これに対し、Xとしては2022・1・17のYによる利息分支払いは「権利の承認」を意味するので、時効は同日より更新すると主張
3.1.2.1. (ア)「権利の承認」
3.1.2.1.1. 消滅時効においては、時効利益を受ける者が権利の存在を権利者に表示する行為をいう
3.1.2.2. (イ)利息分支払いは利息債権はもちろん元本債権の存在を前提にしたもの
3.1.2.2.1. よって、時効利益を受けるYが債権者Xに対して、元本・利息債権の存在を表示したと言える
3.1.2.3. (ウ)よって、「権利の承認」は認められるから、同日より時効は更新する
3.2. ⑵そこでYは利息支払い日(2022・1・17)を起算日とする消滅時効の成立を主張
3.2.1. ア、「五年」経過し時効完成
3.2.1.1. Yによる時効の援用(145)
3.2.2. イ、これに対し、Xとしては時効完成後の2028・3・7の1万円支払はY債務を自認する行為にあたり、Yは時効援用不可と主張
3.2.2.1. (ア)時効完成後に債務を自認した場合の事項援用の可否
3.2.2.2. (イ)消滅時効の利益を得る者が債務を認めつつ、消滅時効の成立することは相容れない。
3.2.2.2.1. そして、相手方としても時効援用しないと考えるののが通常
3.2.2.3. よって、時効完成後に債務を認めた者は信義則(1条2項)上、時効援用権を失うのが原則と考えるべき
3.2.2.3.1. もっとも、事案を総合考慮して、債権者が信義則に反するなど債務者の時効援用権を失わせるべきでない特段の事情がある場合はこの限りではない
3.2.2.4. (ウ)Yの1万円の支払いはXの督促に応じた一部弁済であり、これはY元本利息債務を認めもの
3.2.2.4.1. よって、Yは時効援用権を失うのでその援用は不可が原則
3.2.2.5. もっとも、前記の通り、本件では本来消滅時効が成立しているところ、債権者Xは貸金業者としてこれを十分認識し、債務者に事項消滅を前提に援用するか否かを確認する信義則上の義務があった。
3.2.2.5.1. それにも関わらず、債権が消滅していないかのように督促をし、一括弁済を求めることはこの義務に違反する。
3.2.2.6. また、債務者Yの前期一部弁済も、督促状によって恐怖を抱き、生活困窮者であるにも関わらず、X従業員Aに言われるままに知人Bに借り入れてまで1万円を返済したものである
3.2.2.6.1. つまり、Yにおいて積極的に時効利益を放棄したとは必ずしも評価できない
3.2.2.7. これらを総合考慮すると本件では債務者Yの時効援用権を失わせるべきでない特段の事情がある
3.2.2.8. (エ)したがって、Yは時効の援用が可能である。
3.2.3. ウ、よって、Yの時効援用によって、消滅時効は成立する