入門物理コースにおける、オンライン課題システムの利用法の男女差 Gender differences in the use of an online homework system in an...

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入門物理コースにおける、オンライン課題システムの利用法の男女差 Gender differences in the use of an online homework system in an introductory physics course by Mind Map: 入門物理コースにおける、オンライン課題システムの利用法の男女差 Gender differences in the use of an online homework system  in an introductory physics course

1. 概要

1.1. 何度も解くことができるオンラインの問題を、男女は異なる使い方をする

1.1.1. 男子

1.1.1.1. さっさと問題を解こうとすることが多い

1.1.1.2. 何回も回答することで正答にたどり着こうと考える

1.1.2. 女子

1.1.2.1. 答えを打ち込む前に友人やTAとやりとりすることが多い

1.1.2.2. 何回も回答することで成績を気にせずストレスなく自分なりの問題解決の方法を探ることができると考える

2. 6.結論

2.1. オンライン宿題システムを使用した場合に、男女の学生がどのように異なる相互作用をするのかを調べた

2.2. もともとテストやFCIの成績にわずかなジェンダーギャップしかなかった

2.3. オンライン課題についてのアンケートと、回答の分析において、類似点が多かった

2.4. いくつかの小さい違いがあり、それが男女のオンライン課題から受ける恩恵の差につながっている可能性がある

2.4.1. 男子

2.4.1.1. まず問題を解こうとする

2.4.1.2. 複数回ランダムに答えることで正答にたどりつこうとする

2.4.1.3. オンライン教材を利用するときに素早くクリックしたり、問題を解決できなかった後に新しい試みを再提出する傾向が少し強かった

2.4.2. 女子

2.4.2.1. 問題を解く前に、仲間やTAに相談する

2.4.2.2. 複数回答えられることで、成績を気にしたりストレスを感じたりすることなく、 自分なりの問題解決のアプローチを模索することができると考える

2.4.3. 2成分分析の結果、問題提出の頻度は2つの異なるモードの重ね合わせである可能性が示された

2.4.3.1. 短い所要時間のモード

2.4.3.1.1. ランダムなものや予想を提出するなど

2.4.3.2. 長い所要時間のモード

2.4.3.2.1. 問題を深く検討するなど

3. 5.オンライン上のやりとりの分析結果

3.1. A.オンラインリソースへのアクセス

3.1.1. 女子は男子よりも有意に問題ページやコンテンツページへのアクセス回数が多い

3.1.1.1. 男子

3.1.1.1.1. コンテンツページ

3.1.1.1.2. 問題ページ

3.1.1.2. 女子

3.1.1.2.1. コンテンツページ

3.1.1.2.2. 問題ページ

3.1.1.3. p<0.0001

3.2. B.リソースへのアクセス頻度

3.2.1. 生徒が各リソースにどれだけ時間を費やしたかを調べることも重要

3.2.2. アクセス履歴からタスクに費やした時間を推測するのは困難

3.2.2.1. 長すぎると、別のことをやってる可能性もある

3.2.3. 同じ学生が同じオンラインリソースで2つのトランザクションを行う時間差を調べる

3.2.3.1. トランザクションとは

3.2.3.2. 例

3.2.3.2.1. 問題を検索してから試しに解いて提出するまでの時間

3.2.3.2.2. リソースを行き来するまでの時間

3.2.3.2.3. 問題を提出してから再提出するまでの時間

3.2.3.3. 時間差が長くなるほど別のことをやってる可能性が高くなる

3.2.4. 同じリソース内で、1分以内に連続して行われたトランザクションの時間差を調べる

3.2.4.1. 図4

3.2.4.1.1. 同じリソースで1分以内に連続してトランザクションが行われたときの、トランザクション間の時間差

3.2.4.1.2. 男女ともに3秒のところにピークがある

3.2.4.1.3. 男子は6秒のところにも強いピークがある

3.2.4.2. 図5

3.2.4.2.1. 同じリソース上での、トランザクション間の時間分布の積分値

3.2.4.2.2. 1分以内に次のトランザクションが起こる割合

3.2.4.2.3. 男子のほうが各リソースにかける時間が短い

3.3. C.複数回の試行の利用

3.3.1. 男子はテキトーにさっさと問題を解くことが多い

3.3.2. しかし、問題をあまり解かず、試行回数が多いというわけではない

3.3.3. 解いた問題数は男女で差がない

3.3.3.1. 男子

3.3.3.1.1. 平均 381±40問

3.3.3.2. 女子

3.3.3.2.1. 平均 389±30問

3.3.4. 試行回数も男女で差はない

3.3.4.1. 男女ともに平均2.1±0.3回

3.4. D.問題の再提出の頻度

3.4.1. 間違えて回答してから、再提出するまでの時間の男女差

3.4.1.1. 図6

3.4.1.1.1. 男子

3.4.1.1.2. 女子

3.4.1.1.3. 男女差はほぼなく、どちらもかなり短い時間で再提出している

3.4.2. 1.1成分モデル

3.4.2.1. 項目の応答時間は、Weibull分布を用いて一般的にモデル化される

3.4.2.1.1. (1)式

3.4.2.1.2. (2)式

3.4.2.1.3. 図7

3.4.3. 2.2成分モデル

3.4.3.1. 複数回回答できることで、2つのモードが混ざっている可能性がある

3.4.3.1.1. 憶測で答えを素早く回答する短いモード

3.4.3.1.2. 考えて回答する長いモード

3.4.3.2. 長いモード(「考える」)と短いモード(「憶測する」)の両方のモードは、重ね合わせた分布になる

3.4.3.3. この挙動をモデル化するために、2成分の対数正規分布を検討

3.4.3.3.1. 式(3)

3.4.3.4. 男性と女性の両方の分布データに対して独立した最小カイ二乗フィットを行った

3.4.3.4.1. 表2

3.4.3.4.2. 図7

3.4.3.5. この2つの要素からなるモデルでは、男女は同じようにランダムなものを投稿する可能性があるが、 実際に問題をより真剣に検討する場合、女子は男子よりも少し時間をかけるということがわかる

4. 4.調査結果

4.1. アンケートの結果について

4.1.1. 238人が回答

4.1.1.1. 男子 97人

4.1.1.2. 女子 138人

4.1.1.3. 性別回答なし 3人

4.1.2. 高校で物理を習った人

4.1.2.1. 男子 75%

4.1.2.2. 女子 74%

4.2. A.課題に取り組む時間と「勤勉さ」

4.2.1. 最初の仮説

4.2.1.1. 女子のほうが課題に費やす時間が長い

4.2.2. 実際の結果

4.2.2.1. 男女が課題にかける時間に有意な差はなかった

4.2.2.1.1. 男子

4.2.2.1.2. 女子

4.2.2.2. 課題にかけた時間の分布にも有意な男女差はなかった

4.3. B.問題への最初のアプローチ

4.3.1. どのような流れで問題に取り組んだか

4.3.1.1. アンケートで自由記述させた

4.3.1.2. 有意な男女差があった

4.3.1.3. 代表的な回答例

4.3.1.3.1. 「2、3回やってみて、資料を読み、もう一度やってみる、友人に助けを求める、ヘルプルームに通う」

4.3.1.3.2. 「最初に直感で式を立て、うまくいかなければ講義や資料の式を参照し、3番目にヒントが役立つかどうかを確認する」

4.3.1.3.3. 「私はまず、講義のノートを使うようにしています。その後、資料に目を通します。それでもダメなときは、 インターネットを使ったり、TAに相談したり、投稿されたディスカッションを見たりします。」

4.3.1.3.4. 「(1)対応する資料を読んでからやってみる、(2)読み直したり、計算し直したりする、(3)友達に聞いてみる、(4)CAPAユーザーに聞いてみる」

4.3.2. 生徒が問題を解く時に最初に取った行動

4.3.2.1. 記述から、回答頻度が高い行動ごとに分類し、分析した

4.3.2.2. 図3 最初のアプローチ(グラフが潰れていたので赤で塗った)

4.3.2.2.1. 問題を解く前に教材を見かえすかどうか

4.3.2.2.2. 問題を解く前に仲間やTAに相談するかどうか

4.3.2.2.3. すぐ問題を解き始めるかどうか

4.4. C.複数の試行の利用

4.4.1. どのように複数回の試行を利用したか

4.4.1.1. アンケートの自由記述で回答させた

4.4.1.2. 回答例

4.4.1.2.1. 「電卓で数字を間違えて入力してしまうような、愚かなミスをしてしまったときにも役立つ。」

4.4.1.2.2. 「テキトーにやってみたり、正しいユニット(?)を選んだり、試行錯誤している。」

4.4.1.2.3. 「答えを2〜3の可能性に絞り、3つとも答えてみる。」

4.4.1.2.4. 「私は、自分が何を間違っているのかを知りたい。何度も挑戦することで、自分の間違いを修正することができる。」

4.4.1.2.5. 「自分が正しいと思う答えだけを入れて、ユニットをチェックしている。試行回数が少ない場合は、すぐに助けを求める。」

4.4.1.2.6. 「ストレスを感じることなく自由に奮闘できるので、複数回試行できるのはよいと思う。また、1つのアイデアだけでなく、複数のアイデアを試すこともできる。」

4.4.1.3. 合計292件の回答

4.4.1.3.1. 男子

4.4.1.3.2. 女子

4.4.1.4. 類似した28のカテゴリに分類された

4.4.1.4.1. 非生産的な回答もあった

4.4.1.5. カテゴリごとの回答率を、性別で分けて算出した

4.4.1.5.1. 男子学生に多い発言から女子学生に多い発言へと並べた

4.4.1.5.2. 表1

5. 3.セッティング

5.1. コースの設定

5.1.1. 物理学入門コースの1学期

5.1.2. 生徒

5.1.2.1. 生徒層

5.1.2.1.1. 物理を専攻していない生徒がほとんど

5.1.2.1.2. 医学部進学課程の生徒が多い

5.1.2.2. 人数

5.1.2.2.1. 男子学生 97人

5.1.2.2.2. 女子学生 141人

5.1.3. オンラインで、教科書の代わりに様々なコンテンツを公開

5.1.3.1. 宿題の問題

5.1.3.2. Webページ

5.1.3.3. 画像

5.1.3.4. 動画

5.1.3.5. シュミレーション

5.2. 集めたデータ

5.2.1. FCI

5.2.1.1. プレテストとしては実施せず

5.2.1.2. 力、運動量、エネルギーの指導後に実施

5.2.1.3. スコアは有意な差はないが男子が高かった

5.2.1.3.1. 男子の平均値 18.8±6

5.2.1.3.2. 女子の平均値 14.8±5

5.2.1.4. 男女のスコアの分布

5.2.1.4.1. 最高スコアは男子が、最低スコアは女子がとっている

5.2.2. MPEX

5.2.2.1. プレテストとしては実施せず

5.2.2.2. 男女ともに平均スコアが16±6 (34点満点)

5.2.3. 試験のスコア

5.2.3.1. 小テスト6回

5.2.3.1.1. 成績の50%

5.2.3.2. 期末テスト

5.2.3.2.1. 成績の15%

5.2.3.3. 女子のほうが男子よりもわずかに高かった?

5.2.3.4. 学期末では男女の平均は同じくらいだった

5.2.4. クリッカーのスコア

5.2.4.1. 成績の5%

5.2.4.2. 女子のほうが高かった

5.2.5. 書面の記述式の課題

5.2.5.1. 成績の15%

5.2.5.2. 女子のほうが高かった

5.2.6. オンライン課題システムへの解答

5.2.6.1. 成績の15%

5.2.6.2. 全部で422問

5.2.7. 宿題の方略に関する自由記述のアンケート

5.2.8. オンライン課題システム上のやりとり

5.2.9. 成績

5.2.9.1. 統計的に有意ではないが、女子のほうが数%低かった

5.2.9.2. その他の要因は除外できる

5.2.9.2.1. 成績の付け方

5.2.9.2.2. 履修者の減少

6. 2.以前の結果

6.1. 著者のコースにおいて、オンライン課題は一貫して役に立っていた

6.2. オンライン課題が学生のパフォーマンスに及ぼす効果に関する研究は多くの要因に左右される

6.2.1. コースの規模

6.2.2. オンラインでの宿題の性質

6.2.3. 学生の集団

6.2.4. コースのレベル

6.2.5. コースの他の分野での教授法

6.3. 落第寸前の生徒に最も効果的

6.3.1. 大規模な物理学入門コースの研究では、オンラインでの宿題が、落第寸前の学生に最も効果的であるという一貫したパターンが見られた

6.3.2. オンライン課題導入前

6.3.2.1. 成績分布は釣り鐘型

6.3.3. オンライン課題導入後

6.3.3.1. 2.0(単位修得のボーダーライン)の成績を境に減少

6.4. 著者の以前の調査結果

6.4.1. オンライン課題なしの前期(Phy231)とありの後期(Phy232)で成績の分布を比較した

6.4.2. 結果

6.4.2.1. 成績はオンライン課題ありのほうが向上した

6.4.2.2. 注意点

6.4.2.2.1. オンライン課題の成績は全体の成績にはほとんど影響していない

6.4.2.3. この男女の効果の違いを説明する要因は特定できなかった

6.4.2.4. ほとんど女子の成績向上によるものだった

6.4.3. 前期(オンライン課題なし)・後期(オンライン課題あり)の男女の成績分布の比較

6.4.3.1. (a),(b)から

6.4.3.1.1. 女子のほうが男子よりも後期で成績が伸びた

6.4.3.2. (c),(d)から

6.4.3.2.1. 前期の男女差が後期ではほぼ無くなっている

6.4.4. なぜこのような結果になったか

6.4.4.1. 男女のオンライン課題への取り組み方の違い

6.4.4.1.1. このコースでは、オンライン課題についての男女のデータをとっていなかったので、わからなかった

6.4.4.1.2. ただ、別の研究(資料13)によると、男子よりも成績が良い女子は、オンライン課題を早めに行うことが多いという違いがあることだけわかっている

6.4.4.2. 学期間の授業内容の違い

6.4.4.2.1. 前期はかなりの時間機械を使っていたので、男子に有利だったのかも

6.4.4.2.2. 後期は電磁気、現代物理など抽象的な内容だったので、特段男子に有利ではなかったのではないか

6.4.4.2.3. ただ男女差は、後期で男子の成績が下がって縮まったわけではないので、この理由だけでは結果は説明できない

7. 1.導入

7.1. この論文ではオンライン課題における男女の相互作用の違いに着目する

7.1.1. 入門物理におけるジェンダーギャプは根強い

7.1.1.1. ジェンダーギャップ解消はPERの重要な目標の一つ

7.1.1.2. しかし、報告されている教授法の効果は矛盾するものがある

7.1.1.2.1. Lorenzorら

7.1.1.2.2. Pollockら

7.1.2. 物理における男女差の性質を様々な面から深く理解することが大切

7.2. CAPAを使う

7.2.1. computer-assisted personalized approachの略称

7.2.2. 1992年、ミシガン州大が始めたオンライン課題

7.2.3. 対象

7.2.3.1. 小規模な入門物理コース

7.2.4. 内容

7.2.4.1. ランダム化された課題

7.2.4.1.1. 生徒には同じ問題を変えたものが割り当てられる

7.2.4.1.2. 生徒が単に答えを教え合うことがないようにしている

7.2.4.1.3. 複数回解くことができる

7.2.4.2. 即フィードバックを与える

7.2.5. 教育効果についての研究結果

7.2.5.1. 女子生徒は男子生徒よりもオンライン課題から恩恵を受けているように見える

7.2.5.2. 判断材料

7.2.5.2.1. 最終的なコースの成績

7.3. 研究内容

7.3.1. 過去、男女差が見られたデータについて、オンライン課題の利用における男女差を調べる

7.3.2. その差が学習の成功にどの程度影響するのかを推論する

7.3.3. ※男女がオンライン課題から受ける恩恵の差についてちゃんとした検証はできない

7.3.3.1. 似たようなコースで、オンライン課題がある場合とない場合で比較しなければいけないから

7.3.3.2. オンライン課題は、学習の成功に有益であることが証明されている

7.3.3.3. 教育研究の目的のためだけに、ランダムなサブセットの学生に対してオンライン課題を廃止することは難しい