ピュー・マトリックスとは
ピュー・マトリックスは、評価基準にもとづく比較ツールです。選択肢を並べ、重視する基準について合意し、それぞれの選択肢を1つのベースラインと比べて採点します。スコアはすべて、プラス(+)、ゼロ(0)、マイナス(-)のいずれかです。このシンプルな尺度こそが、この手法を素早く実行でき、チームで話し合いやすくしています。
この手法は、競合するコンセプトのなかから体系的に選ぶ方法を求めた製品設計エンジニア、Stuart Pugh(スチュアート・ピュー)に由来します。「ピュー法」やコンセプト選定と呼ばれることもありますが、3つの呼び名の背後にある考え方は同じです。もともとはエンジニアリングの分野で広まりましたが、その論理はワークショップの外でも十分に通用します。
チームがピュー・マトリックスに手を伸ばすのは、複数の選択肢が競合し、明確な答えが1つに定まらないときです。多くの案から1つの設計方針を選ぶコンセプト選定に向いています。各社にトレードオフがあるベンダー選定にも向いています。次に何を作るかを検討する機能の優先順位付けにも合います。

ピュー・マトリックスと意思決定マトリックスの違い
まず、より一般的な意思決定マトリックスから確認しましょう。意思決定マトリックスは、各選択肢を数値スケールで採点し、多くの場合は重みを掛けたうえで、すべてを合計します。細かな精度を出せる一方で、設定と採点には手間がかかります。
これに対して、ピュー・マトリックスはもっと軽量です。各選択肢を1つのベースラインと比べ、それより優れているか、同等か、劣っているかだけを記録します。つまり、ピュー・マトリックスは素早い収束に、意思決定マトリックスは細部の精度に強みがあります。2つの手法を並べると、次のように整理できます。
ピュー・マトリックス
意思決定マトリックス
すべての選択肢を1つのベースラインと比較して評価する
各選択肢をそれ自体の評価で採点する
各セルに +/0/- を使う
1〜5や1〜10などの数値スケールを使う
作成が速く、ラウンドを重ねて素早く見直せる
精密だが、設定と採点に時間がかかる
初期のコンセプト選定や素早い合意形成に向く
細部の精度が必要な最終決定に向く
どちらの手法が優れているかは、一概には決まりません。ピュー・マトリックスは妥当な出発点があるときに素早く意見をまとめるのに役立ち、数値式の意思決定マトリックスは小さな差が本当に効いてくる場面で真価を発揮します。
どんなときにピュー・マトリックスを使うか
ピュー・マトリックスが力を発揮するのは、3つ以上の選択肢と3つ以上の評価基準があり、チームで共有できて説明もつく結論が必要なときです。ベースラインが全員の共通の物差しになるため、議論は個人の好みではなく評価基準に根ざしたものになります。比較の対象として、現行のプロセスや有力な標準案を挙げられるなら、準備は整っています。
一方で、別のツールが向いている決定もあります。選択が依存関係のある一連のステップとして展開するなら、意思決定ツリーのほうがその分岐をうまく描けます。バックログを2つの軸で仕分けするなら、インパクト・エフォート・マトリクスのほうがクイックウィンを素早く見つけられます。1つの決定を複数の視点から眺めることが主な目的なら、シックス・シンキング・ハッツが、採点グリッドでは引き出せない観点をあぶり出してくれます。

ピュー・マトリックスは、複数の選択肢まるごとを1つの基準と比べるためのものです。その状況なら、これほど速く明快なツールはそう多くありません。
ピュー・マトリックスの作り方:6つのステップ
この手法は明確な6つのステップに分かれ、それぞれがマインドマップの枝にきれいに対応します。マインドマップとして作れば、比較が広がっても全体が1枚のビジュアルなページに収まります。
ステップ1:決定と選択肢を定義する
まず、決定そのものをやさしい言葉で書き出し、次に検討する選択肢を並べます。決定はマインドマップのルートに置き、全員が同じ読み方をできるようにします。選択肢が2つだけの比較にマトリックスはほぼ不要なので、最低でも3つを目安にしましょう。各選択肢はルートから伸びる独立した枝として追加します。名前は短く具体的に保ち、マップをひと目で追えるようにします。この枠組みを早い段階で整えておくと、後の堂々巡りの議論を大きく減らせます。
ステップ2:ベースラインとなる基準の選択肢を選ぶ
次に、ベースライン(データムとも呼ばれます)となる1つの選択肢を選びます。多くのチームは「変更が現状に勝るか」を実質的に問うているので、現行のプロセスが自然な選択になりがちです。現行のプロセスがなければ、有力で馴染みのある標準案を選びましょう。このベースラインはその枝に明確に印を付けます。ほかのすべての選択肢はこれと比べて採点されるため、うまく選んだ基準が比較全体を誠実に保ちます。弱いベースラインは、続くすべてのスコアをひそかにゆがめてしまいます。
ステップ3:重視する評価基準に合意する
次に、選択肢を実際に何で判断するのかを決めます。評価基準は、決定を本当に左右するもの、たとえばコスト、速さ、定着、リスクなどから引き出します。各基準はすべての選択肢の下に小枝として追加し、構造を一貫させます。ほとんどの場合、5〜8個の基準を目安にします。「コスト」や「リスク」が全員にとって同じ意味になるよう、1つひとつを声に出して一緒に定義しましょう。ここで定義を共有しておくと、採点が始まってからの言い争いを防ぎ、マップの信頼性を保てます。
ステップ4:重みを付ける(差がある場合)
すべての基準が同じ重みを持つわけではなく、それで構いません。ほかよりはるかに重要なものがあるなら、それぞれに1〜5の重みを付け、5を最重要とします。重みは基準の小枝にそのまま記録し、採点中も見えるようにします。すべてが本当に同じくらい重要なら、このステップを飛ばして比較をシンプルに保てます。重みは精度を高めますが、結果を変える場合にだけ加えましょう。実際の計算は、後の例で扱います。
ステップ5:ベースラインと比べて +/0/- で採点する
ここがこの手法の核心です。各基準について、その選択肢がベースラインより優れているか、同等か、劣っているかを問います。優れていればプラス(+)、同等ならゼロ(0)、劣っていればマイナス(-)を付けます。数値を好むチームは +1、0、-1 を使い、これはまったく同じように機能します。ベースライン自体は基準なので、すべて0で採点します。各スコアは対応する小枝に追加し、プラスとマイナスのパターンをひと目で読めるようにします。
ステップ6:スコアを合計し、話し合い、練り直し、繰り返す
最後に、選択肢ごとにスコアを合計します。プラスを数え、マイナスを引いて、その結果を各選択肢の枝に書き込みます。最も高い合計が最有力候補を指し示しますが、それは判決ではなく出発点として扱いましょう。意外な結果について話し合い、偏ったスコアがチームを戸惑わせるなら、簡単ななぜなぜ分析で本当の要因が見えてくることがあります。複数の選択肢の良いところを取り込んだ、より強いハイブリッド案を探し、もう1ラウンド回します。採点と練り直しをサイクルで進めるこの制御された収束こそ、ピュー・マトリックスが最も力を発揮する場面です。
ピュー・マトリックスの例:プロジェクト管理の進め方を選ぶ
あるチームがプロジェクト管理の進め方を選びたいとします。選択肢は、現行のプロセス、カンバンボード、スクラムの3つです。現行のプロセスがベースラインなので、全項目で0になります。チームは5つの評価基準に合意し、それぞれに1〜5の重みを付けます。チームへの定着(5)、価値実現までの速さ(4)、可視性(4)、柔軟性(3)、導入コスト(2)です。
MindMeisterでは、決定が「プロジェクト管理の進め方を選ぶ」としてルートに置かれます。そこから選択肢ごとに3本の枝が広がります。各選択肢の下には同じ5つの基準が小枝として並び、それぞれに +/0/- のスコアが入ります。合計は選択肢の枝に集約されるので、マップを離れなくても勝者が見えます。2つの代替案がベースラインに対してどう採点されるかを見てみましょう。
評価基準
カンバンボード
スクラム
チームへの定着
+
0
価値実現までの速さ
+
0
可視性
+
+
柔軟性
+
\-
導入コスト
0
\-
合計
+4
\-1
このファーストパスでは、カンバンボードが優勢です。おもに定着させやすく、価値をすぐに示せるためです。重みを掛けて計算すると、カンバンボードの合計は16になります(定着5+速さ4+可視性4+柔軟性3、導入コストはプラスなしで0)。スクラムは可視性で優れているので、チームの次のラウンドではその強みを残したハイブリッド案を探ります。
よくある失敗
ピュー・マトリックスはシンプルですが、いくつかの落とし穴があります。次の点に気をつけましょう。
弱いベースラインを選ぶ: あいまいな基準は続くすべてのスコアをゆがめるため、現行のプロセスか有力な標準案を選ぶ
基準を詰め込みすぎる: 判断が細切れになるので、決定を本当に左右する5〜8個に絞る
1回のラウンドで打ち切る: 最初の合計は出発点であり、ハイブリッド案を試してもう1ラウンド回す
重みを付けずに済ませる: 一部の基準がはるかに重要なら、1〜5の重みで差を明確にする
数字だけで決める: 最高スコアを最終判断とせず、意外な結果はチームで話し合う
考える段階と実行する段階:MindMeisterとMeisterTask
意思決定には2つの段階があります。選択肢を考えて絞り込む段階と、選んだ案を実行に移す段階です。
MindMeisterは、考える段階のためのツールです。ピュー・マトリックスをマインドマップとして組み立て、選択肢を枝、評価基準を小枝にし、リアルタイムのコラボレーションでチーム全員が同時にスコアを追加できます。決定、基準、合計が1枚のページに収まるので、議論は共通の見取り図の上で進みます。
決定が固まったら、実行に移る番です。MindMeisterと連携する別製品のMeisterTaskを使えば、勝ち残った選択肢を担当者と期限付きのタスクに変えられます。MindMeisterで考えを整理し、MeisterTaskで実行に移す。この流れが、比較を実際の前進へとつなげます。
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