1. 1、A→Yの所有権(206)に基づく妨害排除請求としての抵当権登記抹消請求の可否
1.1. ①A所有権②Yによる抵当権(369条1項)登記が必要
1.1.1. ⑴AはB死亡とその後の遺産分割をもって甲所有権を承継(882、896本文、909本文)
1.1.1.1. よって①充足
1.1.2. ⑵②充足
2. 5、したがって、既に成人であるXの「追認」なくして、本件契約の効果はXに帰属せず、抵当権登記保時権限なし。本件請求可
3. 4、代理権濫用について
3.1. ⑴「自己又は第三者の利益を図る目的」
3.1.1. ア、親権者における「自己又は第三者の利益を図る目的」の判断基準
3.1.2. イ、親権者による利益相反行為にあたらない限りは、親権者は代理行為につき広範な裁量を有するので、「自己又は第三者の利益を図る目的」も限定的に考えるべき
3.1.3. よって、子の利益を無視して自己又は第三者の利益を図ることのみを目的とするなど、親権者に子の包括代理権を与えた方の趣旨に著しく反するなど特段の事情がない限り、「自己又は第三者の利益を図る目的」とはいえない
3.1.4. ウ、本件契約締結は子のXがその所有する甲土地に抵当権をされるというもので、物上保証され借入れられた金銭はDの事業資金に充てられた。
3.1.4.1. よって、本件契約締結はXになんらの利益を与えないばかりか単に不利益を被らせるものであり、これをもって第三者C・Dが利益を得ることを図ったものと認められる
3.1.4.2. 乙賃貸管理は主にAの利益
3.1.5. エ、したがって本件では824条の趣旨に著しく反する特段の事情があったと言えるから、要件に該当
3.2. ⑵そして、「相手方」Yも当該融資がDの事業資金であり、生活資金などXの利益にならないことを知っていたのであるから、上記「目的」を知っていた
3.3. ⑶したがって、本件契約締結は親権者Aの代理権濫用にあたり、無権代理とみなされる(107)
4. 3、利益相反行為について
4.1. ⑴本件契約締結が親権者による利益相反行為にあたれば、親権者Aは特別代理人を選任する請求しない限り(826条1項)は無権代理とみなされる。(108条2項本文)
4.1.1. ア、親権者による利益相反行為(826条1項)の判断基準
4.1.2. イ、同条の趣旨は子の利益の保護にあるが、取引安全との調和を図る必要がある
4.1.3. よって、利益相反行為にあたるかは、子の利益に反する行為をもって親権者が直接に受益するかをもっぱら行為自体または行為の外形のみで判断すべき
4.1.4. ウ、本件抵当権設定契約は、親権者Aではなく第三者Cが代表を務めるDの債務を物上保証を目的とするもの
4.1.4.1. よって、その行為自体と外形のみから判断すれば、抵当権設定という子Xに不利益な行為をもって、C・Dは直接に受益するが、親権者Aが直接に受益するものとは言えない
4.2. ⑵よって、本件契約締結は親権者による利益相反行為にあたらない
5. 2、もっともYは登記保持権限としてAY間の甲土地抵当権設定契約の有効を主張。そこで、Xとしては本件契約の効力を争う
5.1. ⑴Xとしては本件契約締結は無権代理行為にあたり、「本人」Xの「追認」なくしてXに対して「効力を生じない」と主張(113条1項)
5.2. ⑵本件契約締結時にXは未成年(4条)にあたり、Aはその法定代理人にあたる(824本文)
5.2.1. よって、有権代理として原則Xに効果帰属(99条1項)