1. 第1、小問⑴について、XのAに対する、CX間甲土地売買契約(555)に基づく所有権移転登記手続請求の可否
1.1. 1、XはCX間契約の効果がAに帰属すると主張
1.1.1. ⑴Xとしては、まずAを本人、Cを代理人とする有権代理(99条1項)の成立を主張
1.1.1.1. ア、代理行為
1.1.1.1.1. 本件取引
1.1.1.2. イ、顕名
1.1.1.2.1. CはB代理人として振る舞う
1.1.1.3. ウ、先立つ代理権の授与
1.1.1.3.1. 委任状は無断で作成
1.1.1.4. エ、よって無権代理。効果帰属しないのが原則(113条1項)
1.1.2. ⑵そこで、Xとしては表見代理の成立を主張
1.1.2.1. ア、⑴アの行為に先立つ代理権授与表示なし
1.1.2.1.1. 109不適用
1.1.2.2. イ、⑴アの行為に先立つ基本代理権の授与なし
1.1.2.2.1. 110不適用
1.1.2.3. ウ、過去に代理権授与なし
1.1.2.3.1. 112不適用
1.1.2.4. エ、表見代理不成立
1.1.3. ⑶よって、「追認」なくして「本人」Aに効果帰属しない(113条1項)
1.1.3.1. ア、Aは追認を拒絶している
1.1.3.2. イ、そこで、XはCを相続した本人Aは無権代理人を相続し、本人と無権代理人の資格が融合したといえるのだから、追認を拒絶できないと主張
1.1.3.2.1. (ア)まず、Cには子がいないので887条によって「相続人となるべき者がいない」。よって「直系尊属」たる父Aのみが相続するのが原則。(889条1項柱書、同1号)
1.1.3.2.2. (イ)よって、本人Aは無権代理人Cを相続する
1.1.3.2.3. (ウ)そこで、本人と無権代理人のどちらかが一方を相続した場合の法的地位が問題
1.1.3.2.4. (エ)よって、Xの主張は不可
1.1.4. ⑷したがって、本件契約の効果は本人Aに効果帰属しない
1.2. 2、そこでXとしては、Aは無権代理人Cを相続するのだから、無権代理人としての責任を承継し、履行責任を負うと主張(117条1項)
1.2.1. ア、しかし、このように考えると本人は実質的に追認強制されるに等しく、前記解釈を無意味のするので妥当ではない
1.2.2. よって、本人は無権代理人の履行責任は負わない
1.2.2.1. なお、相続した無権代理人の責任を承継しているので、損害賠償責任は負わざるを得ない
1.3. 3、したがって、Xの請求は認められない
2. 第2、小問⑵について、XのBに対する、CX間甲土地売買契約(555)に基づく所有権移転登記手続請求の可否
2.1. 1、まず、A死亡によって、「被相続人の子」(887条1項)であるB・CがAの財産上の「権利義務」を承継する(882、896本文)
2.2. 2、そこで、Xとしてはまず有権代理・表見代理が成立し本人AにCX間契約の効果が帰属し、Bはその地位を承継すると主張
2.2.1. しかし、第1と同様、本件でも有権代理・表見代理は成立しない
2.2.1.1. よって、本人の追認がない限り、CX間契約の効果は本人に効果帰属しない(113条1項)ので、この主張は不可
2.3. 2、そして、本人Aは追認するか否かを示さずに死亡している
2.3.1. そこで、本人が追認の是非を示さず死亡し、無権代理人を含む相続人らに共同相続された場合の処理が問題となる
2.3.1.1. ⑴まず、相続人は本人の地位を包括承継するのであるから、本人の追認するか否かを選択する地位ごと承継すると考えるべき
2.3.1.1.1. (無権代理人について)
2.3.1.1.2. (無権代理人以外の相続人について)
2.3.1.1.3. (共同行使の要否)
2.3.1.2. よって、無権代理人以外の相続人の追認がない限り、無権代理行為は相続人全体に効果帰属しないと考えるべきである
2.3.1.3. ⑵よって、無権代理人以外の相続人Bが追認拒絶している本件において、本件CX間契約の効果は相続人B・Cに効果帰属しない
2.4. 3、そして、第1と異なり、Cの無権代理人責任はBは何ら承継しないので、履行責任は負う余地はない
2.4.1. Cはこれを負うが、本件では遺産分割の協議(907条1項)をもって甲所有権はBに存するので、Cはこれを処分する権利を持たない