1. 1、XのYに対する、賃貸借契約(601)終了に基づく甲建物明渡請求
1.1. ⑴XはYと賃貸借契約を交わし、それに基づき甲を引き渡している
1.2. ⑵では、契約は「終了した」といえるか
1.2.1. ア、賃貸借契約の解除(541本文)の可否
1.2.2. イ、解除は契約一般に関する規定である
1.2.2.1. よって、賃貸借においても適用は可能
1.2.3. もっとも、賃貸借契約は継続的債権関係であり、当事者の信頼関係を前提とする
1.2.3.1. よって、当事者の信頼関係が破壊されたとは言えない特段の事情がある場合は例外的に解除できない
1.2.4. ウ、特段の事情なし
1.2.4.1. 解除の要件を満たせば解除可
1.2.5. エ、解除の要件検討
1.2.5.1. (ア)541条本文
1.2.5.2. (イ)540条1項
1.2.5.3. (ウ)効力(97条1項)
1.2.6. オ、解除可能。契約は「終了した」といえる
1.3. ⑶よって、請求可に思える
2. 3、X請求可
3. 2、これに対する反論として、Yは甲建物屋根修理費用・システムキッチン交換工事費用の償還請求権を被担保債権とする留置権(295条)の成立を主張
3.1. ⑴被担保債権の存在
3.1.1. ア、賃貸借契約は終了しており、甲建物は「賃借物」にあたらないので608条の適用はない
3.1.2. イ、しかし、「占有物」にはあたるので198条の適用あり
3.2. ⑵Yは「他人の物の占有者」にあたる。では「その物に関して生じた債権」といえるか(同1項本文)
3.2.1. ア、「その物に関して生じた債権」
3.2.2. イ、留置権の機能は、占有物の返還を拒絶することで債務の弁済を促すこと
3.2.3. 物と債権の牽連関係
3.2.4. ウ、必要費・有益費は占有物である甲自体から発生しているので牽連関係あり
3.3. ⑶「弁済期」にある(同1項但書)
3.4. ⑷しかし、賃貸着終了後なので不法占有。そこでXは同2項を主張
3.4.1. ア、賃貸借終了後に支出された必要費・有益費に関して留置権は295条2項は適用されるか
3.4.2. イ、占有開始は適法。直接適用は不可
3.4.3. もっとも、留置権の趣旨は当事者の公平
3.4.3.1. そして同2項の趣旨は、不法行為による占有において前記機能が働くことは当事者の公平を失わせるので、これを防ぐこと
3.4.3.1.1. この趣旨は占有途中から不法占有となった場合にも妥当する
3.4.4. よって、占有が途中から不法占有になった場合も295条2項の類推適用をもって、留置権は成立しない
3.4.5. ウ、Yの占有は前記賃貸借契約終了により途中から不法占有となっている