1. もくじ ⒈今回の症例は虫垂炎 ⒉診断の根拠となる所見 ⒊観察のポイント ⒋鑑別診断として考えること ⒌救急隊の対応
1.1. 今回の症例は虫垂炎
1.1.1. 虫垂炎は食物残渣、リンパ組織の腫大、腫瘍などにより、虫垂の内腔が閉塞して、二次的に感染が加わるもの
1.1.2. 急性腹症の原因として最も多いため、救急隊も腹痛であれば念頭に置いておきたい
1.1.3. 私なりの考察も含めたので、ご参考に
1.2. 診断の根拠となる所見
1.2.1. ・心窩部痛からはじまり、その後数時間で右下腹部痛
1.2.2. ・軽度の発熱
1.3. 観察のポイント
1.3.1. 心窩部痛からはじまり、右下腹部に移動する腹痛
1.3.1.1. 心窩部痛は内臓痛
1.3.1.2. 食欲不振や悪心・嘔吐などから発症する
1.3.1.3. その後数時間で、右下腹部に痛みが移動
1.3.1.3.1. 体性痛の痛みに変化
1.3.1.4. イメージ.png
1.3.2. 好発年齢は10〜20歳代
1.3.3. 右下腹部を中心とした圧痛
1.3.3.1. マックバーニー点
1.3.3.2. ランツ点
1.3.3.3. イメージ.png
1.3.4. 腹膜刺激徴候
1.3.4.1. 壁側腹膜まで炎症が波及すると出現する徴候
1.3.4.2. 具体的な腹膜刺激徴候は、以下の2つ
1.3.4.3. 筋性防御
1.3.4.3.1. 腹部の触診で、腹壁が病的に緊張して板状に触れる
1.3.4.4. 反跳痛
1.3.4.4.1. 腹壁をゆっくりと圧迫して、急に手を離したときに痛みが増強する徴候のこと
1.3.4.4.2. 腹壁の打診で誘発される痛みも反跳痛に含まれる
1.3.4.4.3. 腹腔内の炎症を示す所見
1.4. 鑑別診断として考えること
1.4.1. 考えられる疾患
1.4.1.1. 但し、あくまで鑑別のため
1.4.1.2. **今回の指令内容からまず疑わなければならないのは「虫垂炎」!**
1.4.1.3. 大前提は、緊急性が高く、早期搬送が必要な疾患に目を向けよう!
1.4.2. 腹痛
1.4.2.1. COMMON(頻度:高)
1.4.2.1.1. 小腸閉塞
1.4.2.1.2. 大腸閉塞
1.4.2.1.3. 憩室炎
1.4.2.1.4. 胃潰瘍
1.4.2.1.5. 十二指腸潰瘍
1.4.2.1.6. 胃腸炎
1.4.2.1.7. 便秘
1.4.2.1.8. 尿管結石
1.4.2.1.9. 胆石発作
1.4.2.1.10. 急性胆嚢炎
1.4.2.1.11. 過敏性腸症候群
1.4.2.2. LESS COMMON(頻度:中)
1.4.2.2.1. 腹膜炎
1.4.2.2.2. 急性腸炎
1.4.2.2.3. 胃・十二指腸潰瘍からの穿孔
1.4.2.2.4. 急性肝炎
1.4.2.2.5. 炎症性腸疾患
1.4.2.2.6. 慢性膵炎
1.5. 救急隊の対応
1.5.1. 腹膜刺激症状を確認
1.5.1.1. 吸入薬を使用している場合、病院連絡時に伝える
1.5.2. 腹部に負担のかかる姿勢にしない
1.5.3. 年齢
1.5.3.1. 青少年層に多い
1.5.3.2. 注意すべきなのは「小児」
1.5.3.2.1. 数時間に炎症が進行して壊疽あるいは穿孔をきたしやすいので注意!
1.5.4. 搬送先医療機関の選定
1.5.4.1. バイタルサイン安定の場合
1.5.4.1.1. 外科選定で対応可能な医療機関へ搬送する
1.5.4.2. ショックの場合
1.5.4.2.1. 救命救急センターを考慮