運動生理学の基礎

Kom i gang. Det er Gratis
eller tilmeld med din email adresse
運動生理学の基礎 af Mind Map: 運動生理学の基礎

1. 1章 運動生理学で行われる一般的な測定

1.1. 単位系

1.1.1. メートル法

1.1.1.1. アメリカでは英国式(ヤードポンド法)が主流だが、国際的にはメートル法が主流である

1.1.1.2. メートル法では長さはメートル(m)、体積はリットル(L)、重さはグラム(g)で表記される

1.1.2. SI単位(international system of units: SI)

1.1.2.1. 単位系が標準化されていないことが問題になっているので測定値を報告する際の標準的な単位系が国際協力ものと発案された

1.1.2.2. ほとんどの専門誌がこれを採用している

1.2. 仕事とパワーの定義

1.2.1. 仕事

1.2.1.1. 力と、その力によって物体が動いた距離の積として定義される

1.2.1.1.1. 仕事 = 力 x 距離

1.2.1.2. 力のSI単位はニュートン(N)、距離のSI単位はメートル(m)、仕事のSI単位はジュール(J)

1.2.1.3. 例) 10kgの重りを2m持ち上げる場合の仕事は

1.2.1.3.1. 1㎏=9.81NとしてkgをNに変換する

1.2.1.3.2. 10㎏=98.10N

1.2.1.3.3. 仕事=98.1Nx2m=196.2N・mまたは196.2J

1.2.2. パワー

1.2.2.1. パワーあるいは仕事率とは、単位時間当たりの仕事量である

1.2.2.2. パワーのSI単位はワット(W)であり、1W=1J毎秒(j・s)と定義される

1.2.2.2.1. パワー = 仕事 ÷ 時間

1.2.2.3. 20000Jの仕事を60秒で行うのに必要なパワー(仕事率)は

1.2.2.3.1. パワー = 20000J ÷ 60s = 333.3W

1.3. 仕事とパワーの測定

1.3.1. エルゴメトリーは行われた仕事量を計算する、という意味である

1.3.2. 測定器の種類

1.3.2.1. ベンチステップ(踏み台)

1.3.2.2. 自転車エルゴメーター

1.3.2.2.1. 標準のモナーク社製の場合、一回転当たり6m

1.3.2.2.2. 単位は一般的には kpm・min

1.3.2.3. トレッドミル

1.3.2.3.1. 歩行ならよいが、走る場合には飛ぶ瞬間があるため仕事量の測定が困難

1.3.2.3.2. 一方、坂を上る場合には歩行、走行ともに容易に測定できる

1.3.2.3.3. トレッドミルの傾斜は「パーセントグレード」という単位で表される

1.4. エネルギー消費量の測定

1.4.1. 直接熱量測定

1.4.1.1. 密閉室内で厳密に測定する

1.4.1.1.1. 熱源を密室に入れ、密室を囲う水流の温度変化を測定

1.4.1.2. SI単位は、仕事と同じくジュール(J)だが、熱エネルギーの計測の場合にはカロリー(cal)も広く使われる

1.4.1.3. カロリーは単位として小さいので、キロカロリー(kcal)が一般的に用いられる

1.4.1.4. 1kcal = 4.186kJ と換算する

1.4.2. 間接熱量測定

1.4.2.1. 簡便に測定できる

1.4.2.2. 原理

1.4.2.2.1. 酸素摂取量と熱産生量が直接的に関連しているので、呼気ガスの成分から計算可能

1.4.2.2.2. 厳密にはエネルギー源(脂質、糖質、蛋白質)によって熱産生量は異なる

1.4.2.2.3. 運動によるカロリー消費は酸素1Lあたり5kcal(21J)という値がしばしば使われる

1.5. エネルギー消費量の一般的な表記法

1.5.1. 酸素摂取量

1.5.1.1. 酸素摂取量(VO2)は何分あたり何Lの酸素が摂取されるか(L・min)という表記で産出される

1.5.1.2. 体重60㎏のトレーニングしている女性で以下のデータを示した場合の酸素摂取量を計算してみる

1.5.1.3. 換気量(STPD)=60L・min、吸気O2濃度=20.93%、呼気O2濃度=16.93% の場合

1.5.1.4. VO2 = 60L・min x (20.93%-16.93%)= 2.4L・min となる

1.5.2. 熱産生量

1.5.2.1. 酸素摂取量は毎分当たりの熱産生量としてあらわす事もできる

1.5.2.2. 60㎏の女性が先ほどの酸素摂取量で30分運動した場合は

1.5.2.3. =2.4L・min x 5kcal・L x 30min = 360kcal

1.6. エネルギー消費量の推定

1.6.1. 水平なトレッドミル上でのウォーキング、ランニングおよびサイクリングにおけるO2需要量は 速度やパワーによって直線的に増加するため、エネルギーコストを妥当な精度で測定可能である

1.7. 運動効率の計算

1.7.1. 運動効率を表記するのに最も一般的なものは  「ネットの効率」  である

1.7.1.1. ネットの効率 = 仕事量 ÷ エネルギー消費量 x 100

1.7.1.2. エネルギー効率はガソリン車で20-25%、自転車エルゴメーターで運動している人で15-27%とされている

1.7.2. 運動効率は様々な要因によって影響を受ける

1.7.2.1. 運動中の仕事量

1.7.2.1.1. 仕事量が高くなる(200W以上)と運動効率は下がる

1.7.2.2. 動作速度

1.7.2.2.1. いかなる仕事率においても至適な動作速度がある

1.7.2.2.2. パワー出力が高くなるほど至適速度は速くなる

1.7.2.2.3. より高いパワー出力時に至適な運動効率を得るには、より早い動作速度が求められる

1.7.2.2.4. 自転車エルゴを低~中強度の仕事量で行うと40-60rpmが至適速度であると一般的に考えられている

1.7.2.3. 運動を行っている筋群の筋線維組成

1.7.2.3.1. 運動効率の向上がパフォーマンスの向上と関連していることは明らかである

1.7.2.3.2. 自転車エルゴメーター中のネットの効率は人によって異なる

1.7.2.3.3. 生理学的には遅筋線維のほうがATP消費が少なく、効率が良い

1.8. ランニングエコノミー

1.8.1. トレッドミル上で運動効率を測定することが出来ないので新たに提案された概念

1.8.2. 効率は仕事量とエネルギー消費量の比

1.8.3. ランニングエコノミーは定常状態の酸素摂取量(VO2)と、ある速度条件のVO2を計測するだけでよい

1.8.4. エリートランナー群と、準エリートランナー、一般ランナー、一般人ではエリートランナーのランニングエコノミー(O2コスト)は低い

1.8.5. ただし、エリートと一般人には平均で10%程度しか差がない

1.8.5.1. また、走力レベルに関係なくグループ内で20%程度の差がある

1.8.6. とはいえ、長距離競技においてランニングエコノミーが良ければ競技パフォーマンスがいいことは疑いようがない事実である

2. 2章 内部環境の制御

2.1. 成体恒常性の維持:動的恒常性

2.1.1. 成体恒常性:ホメオスタシス

2.1.1.1. 安静時の体温(37度)が保たれている状態

2.1.1.2. より適切に表現するなら動的恒常性

2.1.1.2.1. ホメオスタシスは内部環境が変化しないことを意味しているが実際はある設定値を中心に変動するため、実質動的恒常性である。

2.1.1.3. まとめ

2.1.1.3.1. 非ストレス下における一定で正常内内部環境の維持

2.1.2. 定常状態(steady state)

2.1.2.1. 運動を一定時間続けた後の 40度で深部温が安定した状態(運動開始から40分かかる)

2.1.2.2. まとめ

2.1.2.2.1. 一定した内部環境として定義される

2.1.2.2.2. しかし、必ずしも内部環境が正常であることを意味するものではない

2.2. 生体制御システム

2.2.1. 構成要素

2.2.1.1. 感覚器(受容体)

2.2.1.1.1. 最初に刺激を受ける

2.2.1.2. 制御中枢

2.2.1.2.1. 受け取った信号の強度を統合し、攪乱を修正するための適切な応答を引き起こす信号を送る

2.2.1.3. 効果器

2.2.1.3.1. 制御中枢からの信号を受け取る

2.2.2. フィードバック

2.2.2.1. 負のフィードバック

2.2.2.1.1. 成体恒常性からのずれを感知し、正常に戻そうとする働き

2.2.2.1.2. 制御システムのほとんどは負のフィードバックを介して働く

2.2.2.1.3. 例:高濃度の二酸化炭素がその濃度を正常に戻す  :上がりすぎた熱を下げる  :糖質摂取によって高まった血糖値を下げる

2.2.2.2. 正のフィードバック

2.2.2.2.1. 一部存在し、元の刺激を強めるように働く

2.2.2.2.2. 例:出産時の陣痛に伴う子宮収縮の増強  :血小板凝集  :月経

2.2.3. 利得 とは

2.2.3.1. 制御システムが成体恒常性を維持する精度

2.2.3.2. 利得の大きい制御システムのほうが成体恒常性の攪乱を修正する能力が高い

2.3. 運動:成体恒常性制御への試練

2.3.1. 運動は細胞レベルでの適応を介して成体恒常性による制御を改善する 適応と順化は細胞シグナル伝達機構を介して生じる 細胞レベルでのストレス応答は特定のタンパク質を産生することでここなわれる

2.3.2. 適応:Adaptation

2.3.2.1. ストレスのある状態下で生体恒常性を維持する能力を向上させる、細胞または器官系の構造・機能の変化

2.3.3. 順化:Acclimation

2.3.3.1. 環境への適応、既存の成体恒常性維持システムの機能改善

2.3.4. 細胞シグナル伝達

2.3.4.1. 細胞内分泌シグナル伝達

2.3.4.1.1. 運動トレーニングに対する骨格筋の適応

2.3.4.2. 接触分泌シグナル伝達

2.3.4.2.1. 一つの心筋細胞が隣接する細胞に情報を伝達する方法

2.3.4.3. 自己分泌シグナル伝達

2.3.4.3.1. 筋細胞の自己分泌シグナル伝達により核内DNAが刺激され、筋細胞が肥大する

2.3.4.4. 傍分泌シグナル伝達

2.3.4.4.1. 免疫細胞の情報交換と強調した攻撃

2.3.4.5. 内分泌シグナル伝達

2.3.4.5.1. ホルモン応答

2.3.5. ストレスたんぱく質

2.3.5.1. 成体恒常性を維持するためのタンパク質

2.3.5.2. 熱ショックタンパク質(ヒートショックプロテイン:HSP)

2.3.5.2.1. 熱以外にも多様なストレスに対して発現が増加する

2.3.5.2.2. 損傷を受けたたんぱく質を修復し、成体恒常性を回復することで細胞を保護する

3. 3章 生体エネルギー反応

3.1. 代謝

3.1.1. 全ての細胞内反応の総体と定義される 分子の合成(同化)と分解(異化)の両方が含まれる

3.2. 細胞構造

3.2.1. 細胞膜:筋細胞では筋鞘

3.2.2. 核

3.2.3. 細胞質:筋細胞では筋形質

3.3. 生物学的エネルギー変換 :エネルギー産生にかかわる化学反応について

3.3.1. 細胞内化学反応

3.3.1.1. 吸エルゴン反応:吸熱反応

3.3.1.2. 発エルゴン反応:発熱反応

3.3.1.3. 共役反応 :概念として知っとくと理解が進むか

3.3.1.3.1. 互いに関連しあう2つの反応

3.3.1.3.2. 例:発エルゴン反応で出たエネルギーを吸エルゴン反応に使用する

3.3.2. 酸化還元反応

3.3.2.1. 酸化:Oxidation

3.3.2.1.1. 原子または分子が電子を失う過程

3.3.2.2. 還元:Reduction

3.3.2.2.1. 原子または分子への電子の付加

3.3.2.3. 酸化と還元は共役反応である

3.3.2.4. 電子の移動にかかわる分子 :水素運搬体

3.3.2.4.1. ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド:NAD

3.3.2.4.2. フラビンアデニンジヌクレオチド:FAD

3.3.3. 酵素

3.3.3.1. 細胞内化学反応の速度調節を行うタンパク質

3.3.3.1.1. 化学反応は、反応物が反応を進めるために十分なエネルギーを持ってる時に起きる

3.3.3.1.2. 化学反応に必要なエネルギーを活性化エネルギーと呼ぶ

3.3.3.1.3. 酵素は活性化エネルギーを低下させるタンパク質である

3.3.3.2. 酵素触媒反応のイメージ(図参照p50)

3.3.3.3. 種類

3.3.3.3.1. キナーゼ:特定の基質にリン酸を付加(リン酸化酵素)

3.3.3.3.2. デヒドロゲナーゼ:基質分子から水素原子を取り除く(脱水素酵素)

3.3.3.3.3. オキシダーゼ:酸化還元反応を触媒する(酸化酵素)

3.3.3.3.4. イソメラーゼ:基質分子内の原子を組み替えて構造異性体を作る(異性化酵素)

3.3.3.3.5. シンテターゼ:ATPなど高エネルギー化合物の加水分解を触媒する        (TCAサイクル内でGDP →GTPの生成)?

3.3.3.3.6. アコニターゼ:クエン酸からシスアコニット酸を経てイソクエン酸に異性化の触媒(TCAサイクル)

3.3.3.4. 酵素活性を変化させる因子

3.3.3.4.1. 溶液の温度

3.3.3.4.2. pH

3.4. 運動のための燃料 :エネルギー供給に使われる栄養素は主に糖質と脂質 :タンパク質の割合は2-15%程度

3.4.1. 糖質

3.4.1.1. 炭素+水素+酸素

3.4.1.2. 1gあたり4kcal

3.4.1.3. 種類

3.4.1.3.1. 単糖類 :素早く吸収できる

3.4.1.3.2. 二糖類 :2つの単糖類が結合している

3.4.1.3.3. 多糖類

3.4.2. 脂質

3.4.2.1. 炭素+水素+酸素

3.4.2.2. 1gあたり9kcal

3.4.2.3. 形態

3.4.2.3.1. 脂肪酸

3.4.2.3.2. 中性脂肪(トリグリセリド)

3.4.2.3.3. リン脂質

3.4.2.3.4. ステロイド

3.4.3. タンパク質

3.4.3.1. アミノ酸の集合体 :ペプチド結合

3.4.3.1.1. 身体に少なくとも20種類のアミノ酸が必要

3.4.3.1.2. 必須アミノ酸(体内で合成できない)は9種類

3.4.3.2. 1gあたり4kcal

3.4.3.3. エネルギー源としての利用

3.4.3.3.1. アミノ酸まで分解してから使用される

3.4.3.3.2. アラニンは肝臓でグルコースに変換される

3.4.3.3.3. 多くのアミノ酸は筋細胞で中間代謝物(生体エネルギー反応に直接動員されうる化合物)に変換され、 生体エネルギー経路でエネルギーとして直接利用される

3.5. 高エネルギーリン酸化合物

3.5.1. 筋収縮に必要なエネルギーの直接的な供給は アデノシン三リン酸(ATP)が担っている

3.5.1.1. 足りないとほとんどの細胞がすぐ死滅する

3.5.1.2. アデニン+リボース+リン酸基x3(図必要)

3.5.1.3. ATPアーゼによってADPと無機リン酸に分解されたときにエネルギーが放出され、筋収縮に使用される

3.5.1.3.1. ADPと無機リン酸が結合する(ATPが出来る)際には高いエネルギーが必要であるため、この結合は高エネルギーリン酸結合と呼ばれる

3.6. 生体エネルギー反応

3.6.1. 無酸素性のATP産生

3.6.1.1. クレアチンリン酸(phosphocreatine:CP)経路 :クレアチンはアミノ酸化合物で筋肉内、脳内に存在する

3.6.1.1.1. クレアチンキナーゼが触媒する

3.6.1.1.2. クレアチンリン酸からADPにリン酸基と結合エネルギーを供与してATPが産生される

3.6.1.1.3. 運動が始まるや否やATPが消費されADPとなり、CP経路を介してATPが再合成される

3.6.1.1.4. 筋細胞内のCPの量は少ないので、この反応のATP産生量は限られている

3.6.1.1.5. 短時間(5秒以内で終わるような)の瞬発的な筋収縮時に用いられる

3.6.1.1.6. 20g/日のクレアチン摂取は筋細胞内のCP貯蔵量を高める CPの補給は高強度運動パフォーマンスを高める

3.6.1.2. 解糖系

3.6.1.2.1. 筋細胞の細胞質で起こる

3.6.1.2.2. グルコースあるいはグリコーゲンを分解しピルビン酸または乳酸を生成する

3.6.1.2.3. 端的にはグルコースの結合エネルギーをADPとPの再結合に利用することでATP2-3分子を産生する

3.6.1.2.4. グルコース1分子に対して2分子のピルビン酸または乳酸が出来る

3.6.2. 有酸素性のATP産生

3.6.2.1. ミトコンドリア内で起こる :以下の2回路は協調している

3.6.2.1.1. クエン酸回路 :クレブス回路、トリカルボン酸(TCA)回路とも呼ばれる

3.6.2.1.2. 電子伝達系 :呼吸鎖、シトクロム鎖とも呼ばれる

3.6.3. 有酸素性代謝で産生されるATPの量

3.6.3.1. 解糖系

3.6.3.1.1. 基質レベル:1グルコースあたりATP2分子(ここだけ無酸素代謝)

3.6.3.1.2. 2NADH

3.6.3.2. ピルビン酸からアセチルCoA

3.6.3.2.1. 2NADH

3.6.3.3. クエン酸回路

3.6.3.3.1. 6NADH

3.6.3.3.2. 2FADH

3.6.3.4. 合わせて32-33ATP

3.6.4. 酸化的リン酸化の効率

3.6.4.1. グルコースのエネルギーは686kcal/mol

3.6.4.2. ATPのエネルギーは7.3kcal/mol

3.6.4.3. 1回で32ATP産生されるので、代謝効率は

3.6.4.4. 32*7.3/686 = 34% が運動エネルギーとして放出され

3.6.4.5. 66%は熱エネルギーとして放出される

3.6.5. 生体エネルギー反応の制御

3.6.5.1. 一般的に、基質が十分量あれば、酵素の分子数が増えれば化学反応の速度も上昇する

3.6.5.1.1. 生化学的経路にかかわる1-複数の酵素の調節は経路全体の速度を制御する手段である

3.6.5.2. ほとんどの代謝経路には反応速度を制限していると考えられる酵素が含まれる

3.6.5.2.1. 律速酵素 :特徴を示す

3.6.5.3. 各ATP代謝経路の制御系 :すべて負のフィードバック

3.6.5.3.1. ATP-CP系

3.6.5.3.2. 解糖系

3.6.5.3.3. クエン酸回路と電子伝達系

3.6.6. 無酸素性と有酸素性のATP産生の相互作用

3.6.6.1. 対比で語られることが多いが実際の運動では両方からATPを得ている

3.6.6.2. 100m走では無酸素性代謝経路が90%

3.6.6.2.1. ほとんどATP-CP系

3.6.6.3. 400m走(55秒程度)では無酸素性代謝経路が70-75%

3.6.6.3.1. ほとんど解糖系

3.6.6.4. フルマラソンでは大部分が有酸素系

3.6.6.5. 2-30分は?

3.6.6.5.1. 概して短時間の運動は無酸素性代謝経路

3.6.6.5.2. 長時間の運動は有酸素代謝経路

3.6.6.5.3. P69参照

4. 4章 運動時の代謝

4.1. 初めに

4.1.1. 運動は相当に生体エネルギー反応経路を活性化する

4.1.1.1. 激しい運動時のエネルギー消費量

4.1.1.1.1. ほとんどはATP産生に用いられる

4.1.1.1.2. 全身では安静時の15-25倍

4.1.1.1.3. 筋では安静時の200倍

4.2. 安静時のエネルギー必要量

4.2.1. 安静時は常に有酸素性代謝

4.3. 安静時から運動への移行過程の代謝

4.3.1. 酸素借

4.3.1.1. 運動開始時の酸素摂取の遅れ

4.3.1.2. 運動開始数分と、定常状態に達してからの数分の酸素摂取量の差

4.3.1.3. この間はATP-CP系と解糖系によって無酸素にATPが供給される

4.3.1.4. トレーニーや若者は酸素借が少ない

4.3.1.4.1. 運動開始の早い段階で有酸素性のATP産生が開始され、乳酸やH+の産生が少ない

4.4. 運動からの回復 :代謝応答

4.4.1. 歴史的な理解

4.4.1.1. 酸素負債:Oxygen debt

4.4.1.1.1. 運動後の酸素摂取量の増大

4.4.1.1.2. 成分

4.4.2. 現代の理解

4.4.2.1. 運動後過剰酸素消費量 (Excess post-exercise oxygen consumption: EPOC)

4.4.2.1.1. 成分

4.5. 運動に対する代謝応答: 運動時間と運動強度の影響

4.5.1. 短時間の高強度運動 :短距離走や球技

4.5.1.1. 主に無酸素性代謝

4.5.1.1.1. ATP-CP系か解糖系のどちらが優位になるかは運動の継続時間に依存する

4.5.1.1.2. 短距離やサッカーの競り合いなどはATP-CP系

4.5.1.1.3. 400m走(55秒程度)はほとんど解糖系だが、すべての代謝系がかかわっている

4.5.1.1.4. 45秒を超える運動はすべてのエネルギー供給系が使われる

4.5.2. 長時間運動 :マラソン

4.5.2.1. 主に有酸素代謝

4.5.2.1.1. 10分を超える場合はほぼ有酸素代謝経路からATPが供給される

4.5.2.1.2. 通常、最大下の中強度運動では酸素摂取量の定常状態が維持される

4.5.2.1.3. 例外が2つある

4.5.3. 漸増付加運動 :多段階運動テスト :自転車エルゴメーター :腕エルゴメーター :トレッドミル

4.5.3.1. 心血管機能測定に使用する

4.5.3.1.1. 1-3分ごとに運動強度を増加させる

4.5.3.2. 最大酸素摂取量(VO2)

4.5.3.2.1. 運動中の酸素の運搬と利用の最大能力

4.5.3.2.2. 影響を与える因子

4.5.3.3. 乳酸閾値

4.5.3.3.1. 血中乳酸濃度の上昇ポイントを指す用語

4.5.3.3.2. 漸増付加運動テスト中は運動強度が増すにつれて血中乳酸濃度が指数関数的に上昇し始める

4.5.3.3.3. 非鍛錬者では50-60V・O2 maxで出現するが、鍛錬者ではより高い運動強度(65-80V・O2 max)で生じる

4.5.3.3.4. 血中乳酸濃度の急上昇を説明する用語と機序については論争の真っただ中である

4.5.3.4. 乳酸閾値の活用

4.5.3.4.1. 乳酸閾値はパフォーマンスの予測や持久系競技選手のトレーニングプログラム作成に重要な意義を持つ

4.5.3.4.2. 乳酸閾値とそのほかの生理学的指標(VO2 max)の組み合わせは持久性パフォーマンスの有用な予測因子となる

4.6. 運動中に利用されるエネルギー源の推定 :運動中に脂肪と糖質が寄与する割合を推定するために 一般的に使われる手法がある

4.6.1. 呼吸交換比 :respiratory exchange ratio:RER

4.6.1.1. 生成CO2と消費O2の比

4.6.1.2. しばしば呼吸商(respiratory quotient: RQ)とも呼ばれる

4.6.1.3. なぜ推定できるか

4.6.1.3.1. 脂肪と糖質では酸化される際に消費される酸素量と産生される二酸化炭素量が異なる

4.6.1.4. 脂肪RER:0.7、糖質RER:1.0 (p85参照)

4.6.1.5. 注意点として、被験者は定常状態に達していなければならない

4.6.1.5.1. 定常状態の運動中においてのみVCO2とVO2は組織におけるCO2産生量とO2消費量を反映するため

4.7. エネルギー源の選択を規定する要因

4.7.1. 食事

4.7.1.1. 高脂肪低糖質食は脂肪代謝を促進する

4.7.2. 運動強度と運動時間

4.7.2.1. 脂肪は低強度運動(30% VO2 max)、糖質は高強度運動(70% VO2 max)の中心的エネルギー源である

4.7.2.1.1. 長時間の低強度運動中は骨格筋の脂肪の酸化量が徐々に増加する

4.7.2.2. クロスオーバーポイント

4.7.2.2.1. 脂肪と糖質のエネルギー割合が等しくなる%VO2 max

4.7.2.3. 中強度(40-59VO2 max)の長時間(30min以上)の運動中、RERは時間経過とともに低下する

4.7.2.3.1. 要因は何か

4.7.3. その人が持久力トレーニングを積んでいるかどうか

4.7.3.1. 鍛錬者は同じ運動強度でも非鍛錬者より脂肪を多く、糖質を少なく使う

4.7.4. 低強度運動は脂肪燃焼に最も適しているか?

4.7.4.1. 最も高い脂肪燃焼速度はFAT max と呼ばれ、乳酸閾値と関連がある

4.7.4.2. 最もFAT maxが高いのは60% VO2 max 付近

4.7.4.3. したがって、低強度運動より中強度運動のほうが適している

4.8. 脂肪代謝と糖質代謝の相互作用

4.8.1. 短時間の運動では筋グリコーゲン貯蔵、あるいは血中グルコースが枯渇することはない

4.8.2. 長時間(2時間以上)の運動中には、骨格筋や肝臓のグリコーゲン貯蔵が非常に低いレベルになる

4.8.3. グリコーゲンレベルの低下は疲労を招く

4.8.3.1. なぜか

4.8.3.1.1. 利用可能な糖質の低下は解糖速度を低下させ、そして骨格筋内のピルビン酸濃度も低下させる

4.8.3.1.2. さらに、この低下はクエン酸回路内の中間代謝物の減少を介して、有酸素性のATP産生も低下させる

4.8.3.1.3. 運動中、骨格筋中の中間代謝物は9倍(安静時比)まで増加する

4.8.3.1.4. これが、運動中のATP需要の高まりに対してクエン酸回路の反応速度を上げるのには必要である

4.9. 体内のエネルギー源

4.9.1. 運動中の糖質の供給源

4.9.1.1. 骨格筋と肝臓

4.9.1.1.1. 筋グリコーゲン

4.9.1.1.2. 肝臓は血中にグルコースを放出する(糖新生)

4.9.2. 運動中の脂質の供給源

4.9.2.1. トリグリセリドの形で脂肪細胞に貯蔵される(3500kcal/450g)

4.9.2.1.1. 需要が高まるとトリグリセリドはFFAとグリセロールに分解され FFAはアセチルCoAに変換されクエン酸回路に入ることが出来る

4.9.2.2. 幾分かは筋細胞にも蓄積する

4.9.2.2.1. 加齢に伴う脂肪浸潤は、筋グリコーゲンの減少を代償する意義がある(仮説段階。今後の研究が俟たれる)

4.9.2.3. 運動が長くなると脂肪分解によるFFAのエネルギー源としての役割が徐々に大きくなる

4.9.3. 運動中のタンパク質の供給源

4.9.3.1. エネルギー源として利用するには、いったんアミノ酸まで分解する必要がある

4.9.3.2. 運動中のエネルギー源としての役割は小さく、それは主に分岐鎖アミノ酸(BCAA)とアラニンの利用可能性に依存する

4.9.3.2.1. 分岐鎖アミノ酸:バリン、ロイシン、イソロイシン

4.9.3.2.2. アラニン

4.9.3.3. 1時間以内の運動では消費エネルギーの2%以下である

4.9.3.4. 3-5時間の運動では運動の最後の数分で5-10%に達するかもしれない

4.9.3.5. 肝臓または筋のアミノ酸プールを増加させるすべての要因は、理論的にはタンパク質代謝を高める

4.9.3.5.1. 長時間(2時間以上)の運動はプロテアーゼを活性化させる

4.9.3.5.2. タンパク質の分解で生成されたアミノ酸がエネルギー源として使用される

4.9.4. 運動中のエネルギー源としての乳酸

4.9.4.1. 遅筋は乳酸をピルビン酸に変換し、それを速筋でアセチルCoAに変換してエネルギーとして利用できる

4.9.4.2. 骨格筋で産生された乳酸は血液を介して肝臓に運ばれ、糖新生によってグルコースに変換される

4.9.4.2.1. グルコースは再び骨格筋に戻りエネルギー源として利用される

4.9.4.2.2. コリ回路と呼ばれ、がん細胞も生存のために利用している

4.9.4.2.3. ある組織で乳酸が生成され、別の組織へ輸送されてエネルギー源として利用される概念を乳酸シャトルと呼ぶ

5. 5章 細胞シグナル伝達と運動に対するホルモン応答 途中で終わってる

5.1. 様々な機能のコントロール及び調節に2つの主要な生体恒常性維持システムがある :神経内分泌系

5.1.1. 神経系

5.1.1.1. 神経伝達物質を放出する(神経to神経、神経to組織)

5.1.2. 内分泌系

5.1.2.1. 血中にホルモンを放出する(内分泌シグナル)

5.1.2.2. ホルモン

5.1.2.2.1. 化学的メッセンジャー

5.1.2.2.2. 全身に循環するが特異的な受容体を持つ少数の組織にのみ影響を及ぼす

5.1.2.2.3. 化学構造による分類 :構造の違いは血中での輸送方法、組織における効果の発揮方法に影響を及ぼす

5.1.2.2.4. 血中ホルモン濃度

5.1.2.2.5. ホルモンと受容体の相互作用 途中までしかまとめてない

6. 6章 運動と免疫系

6.1. 運動やその他のストレス(睡眠不足や情動ストレス)は免疫系に影響を与える

6.2. 身体活動と免疫系の関係を理解することは重要である

6.3. 免疫系の概要

6.3.1. 免疫(immunity)は「(病気から)免除される」という意味のラテン語”immunatas”に由来する

6.3.2. 免疫は自然免疫系と獲得免疫系という2つの免疫系の連携により成り立っている

6.3.3. 自然免疫系

6.3.3.1. 第一段階:物理的バリア

6.3.3.1.1. 皮膚

6.3.3.1.2. 粘膜

6.3.3.2. 第二段階:内的防御機構

6.3.3.2.1. 補体タンパク質

6.3.3.2.2. 細胞成分

6.3.4. 獲得免疫系

6.3.4.1. 95%以上の動物は、生体を防御するために自然免疫系だけで対応している。

6.3.4.2. ヒトや脊椎動物は病気に対する新たな防衛ラインである獲得免疫系を発達させた

6.3.4.3. B細胞

6.3.4.3.1. 血中に抗体を分泌することで細菌感染とウィルス感染の両方に対応する

6.3.4.3.2. 多種多様な侵入抗原から身体を防御するために1億種類以上もの抗体を産生することが出来る

6.3.4.3.3. 抗体は主に5つの一般的なクラスがありそれぞれが異なる機能を有している

6.3.4.4. T細胞

6.3.4.4.1. B細胞は骨髄で作られ骨髄で成熟するがT細胞は胸腺(thymus)で成熟する

6.3.4.4.2. これがT細胞と呼ばれる理由である

6.3.4.4.3. T細胞は抗体を産生せずタンパク質抗原の認識のみを専門としている

6.3.4.4.4. T細胞には3つの種類があり

6.4. 運動と免疫系

6.4.1. 運動免疫学

6.4.1.1. 免疫機能に対する運動、心理、環境の影響について研究する学問

6.4.1.2. 過去20年ほどで急激に関心が集まっている

6.4.1.3. 重要なトピックを取り上げて説明する

6.4.1.4. 運動と感染抵抗性

6.4.1.4.1. 運動強度と上気道感染リスク

6.4.1.4.2. 中等度の有酸素運動は感染を予防する

6.4.1.4.3. 高強度かつ長時間の有酸素運動は感染リスクを増加させる

6.4.1.4.4. 極端な環境での運動は感染リスクを増加させるか?

6.4.1.4.5. 風邪をひいたときに運動してもよいか?

7. 7章 神経系の構造と運動の制御 一般的な情報が多いので一部まとめる

7.1. 神経系の一般的な機能

7.2. 神経系の構成

7.2.1. ニューロンの構造

7.2.1.1. 神経細胞体

7.2.1.2. 樹状突起

7.2.1.3. 軸索

7.2.1.3.1. シュワン細胞

7.2.1.3.2. 髄鞘

7.2.2. ニューロンの電気的活動

7.3. 感覚情報と反射

7.3.1. 関節の固有受容器

7.3.1.1. 自由神経終末

7.3.1.1.1. 触覚、圧覚に敏感

7.3.1.1.2. 運動の開始時に強い刺激を受け、最初わずかに適応する(すなわち感度が下がる)が、その後は動作が完了するまで安定した信号を送る

7.3.1.2. ゴルジ型受容器

7.3.1.2.1. 腱に存在するゴルジ腱器官とは別

7.3.1.2.2. 関節周囲の靱帯に見られる

7.3.1.2.3. 自由神経終末ほど多くないが、働きは同じである

7.3.1.3. パチニ小体

7.3.1.3.1. 関節周囲の組織に見られ、運動開始直後急速に適応する

7.3.1.3.2. 関節の回転速度を検知するのに役立っていると考えらえている

7.3.2. 筋の固有受容器

7.3.2.1. 筋紡錘

7.3.2.1.1. 筋の長さ検知器である

7.3.2.1.2. 随意筋には豊富に含まれる

7.3.2.1.3. 複雑な制御が必要な筋(手の筋)には多く、大きな動きが必要な筋(例えば大腿四頭筋)では、筋紡錘の数は相対的に少ない

7.3.2.1.4. 筋紡錘は細い筋線維(錘内筋線維)の束が結合組織の鞘に包まれて構成されている

7.3.2.1.5. 筋紡錘は筋線維と平衡に存在する

7.3.2.2. ゴルジ腱器官

7.3.2.2.1. 筋収縮によって生じる張力を絶え間なくモニタリングしている

7.3.2.2.2. 腱内に存在するため錘外筋繊維と直列に位置している

7.3.2.2.3. 本質的にはゴルジ腱器官は筋収縮中に過度な張力が発生するのを防ぐ、「安全装置」として機能している

7.3.2.2.4. 筋群によって生み出される力の大きさは、ゴルジ腱器官の抑制に対して随意的に抵抗する能力の個人差に左右すると考えられる

7.3.2.2.5. 逆伸張反射

7.4. 筋の化学受容器

7.5. 体性運動機能と運動ニューロン

7.6. 前庭器と平衡機能

7.7. 脳の運動制御機能

7.7.1. 大脳

7.7.2. 小脳

7.7.3. 脳幹

7.8. 脊髄の運動制御機能

7.9. 運動機能の制御

7.10. 自律神経系

7.11. 運動は脳の健康を増進させる

8. 8章 骨格筋:構造と機能

8.1. 骨格筋の構造

8.1.1. 筋衛星細胞

8.1.1.1. 筋の成長や修復に重要な役割を果たす未分化細胞

8.1.1.2. レジスタンストレーニングを行うと活性化されて分裂する

8.1.1.3. これにより、筋線維の核(筋核)の数が増える

8.1.1.4. 理論的には筋線維の筋核の量が増えればその筋線維のタンパク質合成能力が高まり、その結果筋の成長が促進される

8.1.1.5. しかし、筋核の増加が筋の成長に必要であるかどうかについては議論されているところである

8.1.1.6. 成長中の筋線維で筋核が増えるのは、核当たりの筋細胞体積を一定に保つためと考えられている

8.1.1.7. 個々の核を取り巻く細胞質の体積は筋核ドメインと呼ばれる

8.1.1.7.1. 筋核ドメインの生物学的意義は

8.1.1.8. したがって、筋委縮が生じると筋核ドメインを維持するために核が筋線維から消失する

8.2. 神経筋接合部

8.2.1. 持久性トレーニングやレジスタンストレーニングによって神経筋接合部に正の適応が生じる

8.2.2. 具体的には、神経筋接合部のサイズが大きくなる

8.2.3. また、サイズの拡大は、アセチルコリンを貯蔵しているシナプス小胞の数の増加及びシナプス後膜上のアセチルコリン受容体の数の増加を伴う

8.2.4. 結果として、運動誘発性の適応は運動ニューロンが筋収縮を活性化させる能力を向上させ、多くのスポーツにおいてパフォーマンスを向上させる

8.3. 筋収縮

8.3.1. フィラメント滑走説の概要

8.3.2. 筋収縮のためのエネルギー

8.3.3. 興奮収縮関連の調節

8.4. 運動と筋疲労

8.4.1. 筋疲労は、筋の張力または収縮速度の低下に起因する筋のパワー出力の低下、と定義される

8.4.2. 疲労は中枢性疲労と末梢性疲労(骨格筋の疲労)に分類される

8.4.3. 詳しくは19章参照

8.5. 運動にともなう筋痙攣

8.5.1. 運動に伴う筋痙攣は脱水や電解質異常の不均衡によって生じるわけではない

8.5.1.1. 脱水や電解質の不均衡の結果であるという考えが広く信じられている

8.5.1.2. 理論としては

8.5.1.2.1. 神経終末を取り囲む間質においてナトリウムやマグネシウムなどの電解質のレベルが異常になることによって

8.5.1.2.2. シナプス小頭からアセチルコリンが放出され、その結果筋収縮が生じる

8.5.1.2.3. このような制御されていないアセチルコリンの放出が最終的に広範囲にわたる突発的な筋収縮(すなわち筋痙攣)を引き起こす

8.5.1.3. しかし、この理論を支持する研究結果はこれまでほとんどない

8.5.1.3.1. 筋痙攣が静的ストレッチで緩和されるので、アスリートが筋痙攣を起こした際に脱水が原因と考えるのは難しい

8.5.1.3.2. むしろ、電解質の不均衡は運動に伴う筋痙攣の原因ではないとする観察結果がいくつかある 66)

8.5.1.3.3. そもそも電解質異常であれば運動している筋だけではなく全身に影響を及ぼすはずである

8.5.1.3.4. 電気刺激で誘発した筋痙攣では血中の電解質濃度はほとんど変化しない 67)

8.5.1.3.5. ただし、極端な運動条件(暑熱環境での長時間の運動など)では電解質の不均衡によって筋痙攣が起きることは事実である

8.5.2. 運動に伴う筋痙攣は中枢神経系の変化に由来している可能性が高い

8.5.2.1. 運動に伴う筋痙攣は運動ニューロンの興奮性増大をもたらす中枢神経系の変化に由来していることを示唆する実験的証拠はある

8.5.2.2. 具体的には、骨格筋を神経支配している運動ニューロンが過剰発火して脱分極を繰り返すと、制御されていない不随意的な筋収縮(痙攣)が生じる

8.5.2.3. 潜在的な要因は、運動ニューロンへの興奮性入力の増大、あるいは運動ニューロンへの抑制性入力の欠如がある

8.5.2.4. 長時間の激しい運動がどのように脊髄運動ニューロンの興奮性増大を促進するのか

8.5.2.4.1. 筋疲労や筋損傷を引き起こし、筋紡錘やゴルジ腱器官の機能不全を促進する可能性がある

8.5.2.4.2. 激しい運動によって筋紡錘からの求心性信号が増加し、ゴルジ腱器官からの信号は低下する可能性がある

8.5.2.4.3. ゴルジ腱器官は発揮張力についての情報を中枢神経系にフィードバックするのに対して筋紡錘は長さ検出器として働く

8.5.2.4.4. また、ゴルジ腱器官への刺激によって、運動ニューロンの脱分極が起こらないようにする抑制性信号が脊髄に送られる

8.5.2.4.5. したがって、理論的には激しい運動はゴルジ腱器官の発火減少(すなわち運動ニューロンの興奮抑制を減少させる作用)及び

8.5.2.4.6. 筋紡錘の発火増加(すなわち運動ニューロンの活動を増加させる作用)によって筋痙攣を促進する

8.5.3. 運動に伴う筋痙攣:結論

8.5.3.1. 以前として議論の的となっているが、脊髄運動ニューロンの過剰発火の結果であることを示す証拠が増えている

8.5.3.2. 理論的には激しい運動が筋紡錘及びゴルジ腱器官の機能を変化させ、その結果、筋紡錘の興奮性活動が高まり、ゴルジ腱器官による抑制効果が低下することで主に説明ができる

8.5.3.3. これらのことが同時に起こることによって、運動ニューロンの活動が続き、それによる筋痙攣が起きる

8.5.3.4. 現状唯一の解決策は静的ストレッチであるが、長年にわたり、筋痙攣の予防、緩和のための在宅治療法が提案されてきた

8.5.3.5. 食塩を含む錠剤、バナナ、ピクルス、ジュース、スポーツドリンクの摂取が一般的な例である

8.5.3.6. しかし、これらが運動誘発性筋痙攣を一貫して予防できる効果があることが科学的に証明されていない

8.5.3.7. 現在、ある種の天然成分を経口摂取することで運動誘発性筋痙攣を予防できる可能性があることが示唆されている

8.5.3.7.1. ロックフェラー大学のロデリック・マキノン教授とハーバード大学医学大学院のブルース・ビーン教授が本気で研究を行った

8.5.3.7.2. その結果、筋自体に問題があるのではなく筋収縮を制御する運動ニューロンの過剰発火を促進する中枢神経系のメカニズムに問題があると考えた

8.5.3.7.3. 強力な抑制性の刺激を脊髄に送ることによって過剰発火を抑制すれば筋痙攣を予防できると推測し

8.5.3.7.4. 運動ニューロンの発火抑制は口や咽頭にある感覚神経を刺激する天然成分の摂取で実現できるだろうと考えた

8.5.3.7.5. 口の脊髄の接続はそれほど不自然なものではない

8.5.3.7.6. 実際氷を入れた冷たい飲み物で頭が痛くなる経験はだれしもしたことがあるだろうが

8.5.3.7.7. この痛みは口内の上顎にある神経塊が急冷されて生じるものである

8.5.3.7.8. 同様の理由で、ある種のスパイスやショウガ、カプサイシンなどを摂取すると、感覚神経に存在する一過性受容器電位(TRP)チャネルと呼ばれるイオンチャネルが活性化される

8.5.3.7.9. その結果抑制性信号を脊髄に送る神経のスイッチが入り、筋痙攣の原因となる運動ニューロンの過剰発火が抑制される

8.5.3.7.10. 実際にこの仮説をマキノンと共同研究者が実験した

8.5.3.7.11. 予備的な実験で香辛料を摂取させ、口や咽喉のTRPチャネルが活性化され、脊髄に抑制性信号が送られることが確認された 1)

8.5.3.7.12. さらに重要なことは特別に調合された辛い飲み物を運動前に摂取すると、運動誘発性痙攣の頻度と持続時間が減少することが明らかになった

8.5.3.7.13. 現在、我々は運動誘発性筋痙攣を予防するための科学的手段に近づきつつある

8.6. 筋線維タイプ

8.6.1. 骨格筋の生化学的特性と収縮特性の概要

8.6.2. 各筋線維タイプの機能的特徴

8.6.3. 筋線維タイプとパフォーマンス

8.7. 筋活動

8.8. 筋活動及び筋弛緩の速度

8.9. 筋における力の制御

8.10. 力 - 速度 / パワー - 速度関係

8.11. 13章 トレーニングの生理学

9. 13章 トレーニングの生理学

9.1. トレーニングの原理

9.1.1. 過負荷と可逆性

9.1.1.1. 過負荷の原則

9.1.1.1.1. 組織や臓器系をトレーニングに適応させるには 日頃慣れているよりも高いレベルで運動しなければならない

9.1.1.1.2. 徐々に過負荷をかけることで組織や臓器は適応し機能向上がもたらされる

9.1.1.2. 可逆性の原理

9.1.1.2.1. 過負荷が取り除かれたとき、運動によって獲得された体力は急速に失われる

9.1.2. 特異性

9.1.2.1. トレーニングに対する応答は

9.1.2.2. その活動に関与する筋や動員される筋線維タイプ、関与する主要なエネルギー産生経路、収縮速度、筋収縮のタイプに特異的である

9.1.2.3. 例えば、10週間のランニング運動中に腕にはトレーニングの適応は見られない。

9.1.2.4. また、脚の遅筋線維を動員する低強度の長距離走プログラムを行ったとしても、脚の速筋線維にはトレーニング効果はほとんどあるいはまったく現れない

9.1.2.5. 持久性トレーニングは毛細血管密度とミトコンドリア容量を増加させる

9.1.2.6. レジスタンストレーニングは骨格筋において収縮たんぱく質の量を増加させる

10. 14章 慢性疾患の予防

10.1. 肥満、炎症と慢性疾患

10.1.1. 始めに

10.1.1.1. 軽度の慢性炎症では炎症性サイトカイン(例えばTNF-a、IL-6)およびC反応性たんぱく質(CRP)の2-3倍の増加が認められる

10.1.1.2. 軽度の慢性炎症は高血圧、心疾患、脳卒中、ある種の癌、呼吸器疾患、二型糖尿病、メタボリックシンドロームなどの慢性疾患と関連している

10.1.1.3. 肥満は軽度の慢性炎症であり、種々の慢性疾患に関連している

10.1.2. 過剰な脂肪細胞からホルモンや炎症性サイトカインが放出される

10.1.3. 正常な状態では脂肪細胞は脂肪を合成して貯蔵し抗炎症性ホルモン(例えばアディポネクチン)を分泌する

10.1.4. しかし、脂肪細胞は種々の炎症性サイトカインを分泌する能力も有している

10.1.5. 肥満の場合に認められるように脂肪細胞が肥大すると(特に内臓脂肪の場合)、IL-6をより多く分泌するようになりアディポネクチンの分泌は減少する。

10.1.6. 加えて、増大した内臓脂肪にマクロファージが浸潤し、局所炎症を引き起こして、TNF-αを分泌する。

10.1.7. 内臓脂肪からはより多量の遊離脂肪酸、IL-6、TNF-αが肝臓を経て体循環に分泌されるようになる

10.1.8. これの組み合わせによりインスリンの働きが阻害され、2型糖尿病、心血管疾患、メタボリックシンドロームを促進する要因となる

10.1.9. これらの炎症性因子に反応して肝臓からCRPが分泌されるため血中のCRP濃度は炎症のマーカーとして使用されている

10.2. 炎症を予防するための健康的な食習慣と身体活動

10.2.1. 健康的な食習慣に関する研究では、地中海式ダイエット(果物、野菜、豆類、全粒穀物、オリーブオイルを多く使った食事)を2年行ったところ CRPおよびIL-6の著名な低下が認められた (23

10.2.2. これらの効果は体重減少を伴わない場合にも認められた

10.2.3. 定期的な身体活動が種々の慢性疾患のリスクを下げるという多くの研究がある

10.2.4. 縦断的な前向き研究により、高いレベルの身体活動並びに心肺機能が低い炎症レベルと関連しているというエビデンスが増え続けている

10.2.5. これらの所見は介入試験でも確認されているが、炎症レベルがもともと高い人(例えば心リハ中の患者、肥満者)を除けば、炎症レベルの低下は、体重減少ではなく運動自体が起因している可能性がある

10.2.6. 最近の研究では、肥満に伴う慢性炎症は脂肪細胞が酸欠を起こしていることに起因していると報告されている

10.2.6.1. 運動によって血管新生が刺激され酸欠を免れることで炎症が軽減する

10.2.7. 運動が健康にもたらす有益な効果は抗炎症作用だけではない

10.2.8. 運動は種々のリスク要因(血圧、内臓脂肪、HDLコレステロール)に影響を及ぼし、慢性炎症のリスクを軽減する強固なエビデンスがある

10.2.9. まとめると地中海食、適切なレベルへの減量、身体活動を増加させ心肺機能を高めるといった組み合わせを利用するべきである

11. 19章  パフォーマンスに影響を及ぼす要因

11.1. 要因一覧

11.1.1. エネルギー産生能

11.1.1.1. 無酸素系

11.1.1.1.1. クレアチンリン酸濃度

11.1.1.1.2. 解糖系

11.1.1.2. 有酸素系

11.1.1.2.1. 最大酸素摂取量

11.1.1.2.2. 心拍出量

11.1.1.2.3. 酸素運搬

11.1.1.2.4. 酸素抽出

11.1.1.2.5. ミトコンドリア

11.1.2. 食事

11.1.2.1. 糖質

11.1.2.2. 水分摂取

11.1.3. 環境

11.1.3.1. 標高

11.1.3.2. 気温

11.1.3.3. 湿度

11.1.4. 中枢神経系

11.1.4.1. 覚醒

11.1.4.2. モチベーション

11.1.5. 筋力とスキル

11.1.5.1. 練習

11.1.5.2. 天賦の才

11.1.5.2.1. 体型

11.1.5.2.2. 筋線維組成

11.2. 疲労の原因部位

11.2.1. 疲労とは

11.2.1.1. 筋収縮が繰り返されている間にパワー出力や力を維持できないこと

11.2.1.2. と定義される

11.2.2. 疲労の原因となりうる部位

11.2.2.1. New node

11.2.3. 中枢性疲労

11.2.3.1. 賛否両論あるものの、

11.2.3.1.1. 運動単位の発火頻度が減少した場合

11.2.3.1.2. 運動にかかわる、機能している運動単位の数が減少した場合

11.2.3.1.3. に中枢神経系が疲労に関わっていると考えられる

11.2.3.1.4. 覚醒、モチベーションはパフォーマンスを向上、または疲労を軽減する

11.2.3.2. 覚醒がパフォーマンスに影響を与えることを示す報告がいくつかある :大声を出す、目を開けておく、トレーニングのインターバルで計算をする

11.2.3.2.1. 大声を出すと、最大だと思われていた筋力がさらに増加することが報告された

11.2.3.2.2. 1分間で30回おもりを持ち上げさせると、2-3分で疲労が生じるが

11.2.3.2.3. 目を閉じて、筋収縮を疲労が生じるまで行った場合

11.2.3.3. 過去10年にわたり疲労の要因として脳内のセロトニンが注目されてきた

11.2.3.3.1. 神経伝達物質

11.2.3.3.2. 長時間運動中に脳内セロトニン活性が上昇すると疲労が早く起こり 脳内セロトニン活性が低下すると疲労が遅れて起こる

11.2.3.3.3. うつ病患者が中等度の運動を定期的に行うと気分状態が改善する

11.2.3.3.4. セロトニンと疲労に関して多くの研究が行われてきたが、その関係はまだはっきりしていない

11.2.3.3.5. 近年の研究により、疲労と覚醒の両方に関与するのはセロトニン単独ではなく

11.2.3.3.6. セロトニンとドパミンの比であり、ノルアドレナリンの脳内濃度もまた寄与することが示されている

11.2.3.4. 中枢神経系は、運動前の心の準備から何から、多くの受容器からの継続的なフィードバックを含め、運動に深くかかわっている

11.2.3.5. 運動は脳に始まり、脳に終わる

11.2.4. 末梢性疲労

11.2.4.1. 中枢神経系の疲労への関与は10%程度と推定されている

11.2.4.2. 多くの研究結果が末梢性疲労の存在を示している

11.2.4.3. 分類は以下の通りである

11.2.4.3.1. 神経的要因

11.2.4.3.2. 機械的要因

11.2.4.3.3. 筋収縮のエネルギー的要因

11.2.4.3.4. 筋繊維の種類

11.2.4.4. 筋収縮によって産生されるH+やPiなどの代謝物があるレベルに達すると運動単位の動員が反射的に減少しⅲ群、ⅳ群の求心性神経線の作用による疲労が生じる可能性がある

11.3. 全力運動の無酸素性パフォーマンスを制限する要因

11.3.1. 超短時間(10秒未満)のパフォーマンス

11.3.1.1. ⅱ型繊維の動員に依存する

11.3.1.2. 力の発揮には、スキルだけでなくモチベーションや覚醒が必要である

11.3.1.3. 主なエネルギー源はクレアチンリン酸を主とした無酸素性代謝である

11.3.2. 短時間(10ー180秒)のパフォーマンス

11.3.2.1. 10秒の課題では70%が無酸素性代謝経路

11.3.2.2. 180秒の課題では60%が有酸素性代謝経路

11.3.2.3. 無酸素性の解糖系によってエネルギーのかなりの部分が供給され、その結果、乳酸が蓄積する

11.4. 全力運動の有酸素パフォーマンスを制限する要因

11.4.1. 中程度の長さ(3−20分)のパフォーマンス

11.4.1.1. ATPの60−90%が有酸素性代謝によって供給される

11.4.1.2. VO2 MAXに近いエネルギー消費が必要となり

11.4.1.3. これらの運動では1型に加え2型繊維が動員される

11.4.1.4. 酸素供給を阻害する要因はパフォーマンスを低下させる

11.4.1.5. 中程度の長さの運動は高濃度のH+の蓄積(乳酸の産生と同義)を伴う

11.4.2. 中程度ー長時間(21−60分)のパフォーマンス

11.4.2.1. 90% VO2 MAX 以下の強度で行われ主に有酸素である

11.4.2.2. 気温や湿度難度の環境要因、ランナーの水分補給状態が影響を及ぼす

11.4.3. 長時間(1-4時間)のパフォーマンス

11.4.3.1. 筋及び肝臓に貯蔵されているグリコーゲンの分解速度が糖質の利用速度に追いつこうとするため、環境要因がより重要な役割を果たす

11.4.3.2. グリコーゲン分解を邪魔しうる環境に慣れておくことが重要

11.4.3.3. 食事、水分摂取、アスリートの暑熱や湿度への対処能力がすべて最終的なパフォーマンスに影響を及ぼす

11.4.4. パフォーマンスの制限要因は運動タイプに特有である