PEST分析(PESTEL分析)とは
PEST分析は、自社に影響を与える外部の力を体系的に洗い出すフレームワークです。対象はマクロ環境要因、つまり自社ではコントロールできないものの、計画に織り込むべきトレンドや変化です。ドライブ前の天気チェックと同じで、嵐は止められなくても、雨具を用意したり別のルートを選んだりはできます。
このフレームワークには長い歴史があります。そのルーツは、ハーバード大学のフランシス・J・アギラー教授が1967年に提唱したPEST分析にあるとされています。その後、要因が加わり、呼び名もいくつか生まれました。
アルファベット1文字が、1つの要因を表します。すべてを合わせると、時間やお金を投じる前に市場の全体像をはっきりつかめます。分析の結果は、「自社の外で何が起きていて、計画の追い風や向かい風になるのは何か?」という実践的な問いに答える助けになります。
PEST・PESTEL・PESTLEの違い
呼び名がいくつもあるため、混乱しやすいかもしれません。ただし、基本的な考え方は同じです。主なバリエーションを比べてみましょう。
PEST: 政治・経済・社会・技術の4つの要因からなる元祖のモデル
PESTEL: PESTに環境と法律を加えた、計6つの要因
PESTLE: PESTELと同じ6つの要因で、法律と環境の順番を入れ替えたもの
STEEPLE: 6つの要因に倫理を加えた、より広いバリエーション
PESTELとPESTLEは同じ意味です。チームが聞き慣れている名前を選び、統一して使いましょう。この記事では、PEST分析の4要因に環境と法律を加えた6つの要因すべてを取り上げます。
中小企業にPEST分析が役立つ理由
中小企業を経営していると、あらゆるトレンドを追う時間はなかなかありません。PEST分析を使えば、日々の業務から少し顔を上げ、これから起こりそうな変化をすばやく、繰り返し確認できます。
たとえば、従業員12人のコーヒー焙煎所を経営しているとしましょう。輸入関税の引き上げや新しい包装ルールによって、数か月のうちに利益率が圧迫されるかもしれません。だからこそ、早めに知っておきたいのです。
このフレームワークには、4つのメリットがあります。
リスクを早めに察知できる: ルールやコスト、顧客の習慣の変化に、利益率が打撃を受ける前に気づけます
新しい機会を見つけられる: 新しい顧客層や支援制度など、大手の競合が見落としがちなすき間に気づけます
根拠のある判断ができる: 市場参入や新商品の発売、年間戦略を、勘ではなく確認済みの事実にもとづいて決められます
共通の認識をつくれる: 一人が何役もこなすチームでも、全員が同じ市場の全体像をもとに動けます
こうしたメリットを得るのに、戦略部門は必要ありません。必要なのは明確な枠組みと、中小企業のチームで集中して取り組む数時間です。
PESTEL分析の6つの要因
それぞれの要因は、ビジネス環境の異なる側面に目を向けます。以下の問いを出発点にして、自社の業界に合わせて調整してください。すべての問いに答える必要はなく、目の前の判断に関わるものに絞りましょう。
政治的要因(Political)
政治的要因は、事業のあり方を左右する政府の動きや政策の選択を指します。通商政策や税制、企業への公的支援などが含まれます。
新しい関税や貿易ルールで、コストは変わりそうですか?
申請できる政府の支援制度はありますか?
進出先の市場の政治情勢は安定していますか?
経済的要因(Economic)
経済的要因は、経済全体の動きと、それがコストや売上に与える影響を表します。金利、インフレ、為替レートが代表的な例です。
金利が上がると、借入や成長計画にどう影響しますか?
インフレで仕入れ価格が上がっていませんか?
為替レートによって、海外での支払額や売上は変わりますか?
社会的要因(Social)
社会的要因は、顧客を集団として捉え、年齢、価値観、ライフスタイル、購買習慣などを見ていきます。ここでの変化は、顧客が求めるものを変えることがよくあります。
ターゲットとなる顧客層は増えていますか、それとも減っていますか?
オンラインや店舗での購買習慣は、どう変わっていますか?
健康やサステナビリティなど、購入を左右する価値観は何ですか?
技術的要因(Technological)
技術的要因は、製品のつくり方や売り方、届け方を変える新しいツールやチャネルを指します。自動化、AI、デジタルの販売チャネルはすべてここに含まれます。
自動化で、生産コストや事務コストを下げられますか?
AIによって、自社のサービスや競合の提供内容はどう変わりそうですか?
顧客がもっともよく使うデジタル販売チャネルはどれですか?
環境的要因(Environmental)
環境的要因は、気候、天然資源、そして高まるサステナビリティへの期待を扱います。多くの中小企業にとっては、包装や廃棄物に関するルールもここに入ります。
サプライチェーンは、異常気象の影響をどの程度受けやすいですか?
顧客は、より環境にやさしい製品や包装を求めていますか?
自社の市場で、包装やリサイクルのルールは変わりつつありますか?
法的要因(Legal)
法的要因は、守るべき法律や規制です。政治的要因と重なる部分もありますが、すでに施行されているルールや、まもなく施行されるルールに焦点を当てます。
労働法や最低賃金の変更は、人件費に影響しますか?
個人情報保護に関するルールは、顧客データの保管方法にどう影響しますか?
自社製品には、どの製品安全基準や表示基準が適用されますか?
PEST分析の進め方:5つのステップ
世界のすべてが「外部」に当たるとしたら、どこから手をつければよいのでしょうか? PEST分析は、終わりの見えない情報収集ではなく、短く集中したプロジェクトとして進めましょう。次の5つのステップで、実践的に取り組めます。
1. 目的と範囲を決める
まずは、何を判断するのかを決めます。新しい市場への進出、新商品の発売、来年の戦略づくりなどです。判断することが明確になれば、どの要因に注目すべきかが見えてきます。
次に、対象とする市場と期間を決めます。今後2〜3年を見据える地域のパン屋と、10年先を見据えるソフトウェア会社では、必要な情報が異なります。決めた範囲はマインドマップの中心に書き、全員が見られるようにしましょう。
2. 要因ごとにブランチを作って洗い出す
6つの要因それぞれに、ブランチを1本ずつ作ります。次に、ブランチごとにチームでブレインストーミングし、思いつく限りの関連トレンドや変化を書き出しましょう。この段階ではまだ絞り込まず、完成度よりも量を重視します。
ブレインストーミングの後は、国の統計機関や業界団体など、信頼できる情報源でアイデアを確認します。営業、経理、業務部門の同僚にも参加してもらいましょう。異なる部署のメンバーと議論することで、一人では気づけない多角的な視点が得られ、分析の偏りを減らせます。
3. 影響度を評価する
すべての発見に、同じだけの注意を払う必要はありません。それぞれを「影響の大きさ」と「起こる可能性」の2つの軸で評価し、シンプルな評価にまとめます。
高: 影響が大きく、近いうちに起こりそう
中: 影響が目立つ、または起こる可能性がそこそこある
低: 影響が小さい、または起こる可能性が低い
色を使って評価を見える化しましょう。たとえば、高は赤、中は黄、低は緑です。マインドマップをひと目見るだけで、どこに注力すべきかがわかります。
4. 機会とリスクを洗い出す
次に、評価が高・中の発見を、機会と脅威の2つのグループに分けます。環境配慮型の製品への関心の高まりは、エコ志向のブランドにとっては機会です。一方、新しい表示ルールでコストが上がるなら、それは脅威になるかもしれません。
両方に当てはまる発見もあり、たとえば新しいデジタル販売チャネルは、市場を開く一方で新たな競合を呼び込むこともあります。両面を書き留め、それぞれのグループで優先事項を2〜3個選びましょう。そのうえでギャップ分析を行えば、優先事項の達成に向けて、現状とのギャップがどれくらいあるかがわかります。
5. 定期的に見直す
外部要因は常に動いているため、分析には賞味期限があります。年に一度の戦略計画の一環として見直しましょう。新しい市場に進出する前や、新商品を発売する前にも見直すのがおすすめです。
大きな外部の変化も、見直すきっかけになります。

マインドマップを共有の場所に置いておけば、数分で更新できます。
PEST分析の具体例:新しい市場に進出する中小企業
具体例があると、フレームワークを応用しやすくなります。植物由来の洗剤をつくる、従業員20人の日本企業を想像してください。このチームは台湾での販売開始を計画しており、まず外部の力を把握したいと考えています。
マインドマップの中心トピックは「台湾進出」です。6つのブランチにはそれぞれ2つずつ発見を入れますが、確定した事実としてではなく、確認すべき問いとして書きます。
政治: 自社の製品カテゴリーに関税がかかるか、出荷にどの通関書類が必要かを確認する
経済: 円/台湾ドル(JPY/TWD)の為替レートが利益率に与える影響を試算し、台湾ドル建ての価格を検証する
社会: 環境にやさしい洗剤への需要がどれほどあるか、ターゲット顧客が信頼する小売店はどこかを確かめる
技術: 台湾の消費者が使うオンラインマーケットプレイスを調べ、自社のECの仕組みで対応できるかを確認する
環境: 台湾の包装・リサイクルに関するルールを調べ、現在のパッケージが適合しているかを確認する
法律: パッケージを印刷する前に、製品表示と表示言語の要件、登録に関するルールを確認する
次に、チームは各発見を影響度で色分けします。法律と経済の発見は赤にします。表示のミスや不利な為替レートが、販売開始を遅らせかねないからです。社会と技術の発見は、成長につながるので緑です。
見直しの結果、チームは確認すべき有望な機会として、環境にやさしい製品への需要と、すでに定着したオンラインマーケットプレイスの2つを挙げます。主なリスクとしては、表示要件と、為替による利益率の圧迫の2つを挙げます。販売計画と事業計画を進める前に、それぞれの項目をさらに確認し、担当者を決める必要があります。

PEST分析テンプレートと検討のための問い
この構成をもとに、自分のマインドマップをつくってみましょう。中心に判断したいことを置き、要因ごとにブランチを1本ずつ加え、以下の問いをサブトピックにします。分析が進んだら、問いを発見に置き換えていきます。
政治: どの貿易ルールが影響しそうですか? 活用できる公的支援はありますか?
経済: 金利やインフレは、コストにどう影響しますか? 為替レートで価格はどう変わりますか?
社会: どの顧客層が増えていますか? 購買の決め手となる価値観は何ですか?
技術: コストを削減できるツールはどれですか? 顧客が好む販売チャネルはどれですか?
環境: サプライチェーンに影響する気候リスクは何ですか? サステナビリティについて、顧客は何を期待していますか?
法律: 労働、データ、製品安全に関するどの法律が適用されますか? 今後、どんなルール変更がありますか?
さらに、発見を判断につなげるためのブランチを2本追加します。中心トピックと合わせて、マインドマップ全体の枠組みができあがります。
中心トピック: 判断したいこと、市場、期間(「2年以内に台湾で販売開始」など)
影響度の評価: 発見ごとの高・中・低の評価を色で表示
次のステップ: 重要な発見から導いたアクション、担当者、期限
サブトピックは短くまとめましょう。1つの発見を数語で書けば、マインドマップが見やすく、話し合いもしやすくなります。
PESTEL分析とSWOT分析:組み合わせて使う方法
PESTEL分析とSWOT分析はよく一緒に使われますが、答える問いが異なります。PESTEL分析が見るのは外部環境だけです。SWOT分析は、社内の強みと弱みに加えて、外部の機会と脅威も扱います。
2つの手法は、シンプルな順序で組み合わせられます。
まずPESTEL: 市場における外部の力を集めて評価します
次にSWOT: 社内の強みと弱みを全体像に加えます
共通の象限: PESTELの発見が、そのままSWOTの機会と脅威に反映されます
SWOT分析を行うときは、PESTELの重要な発見を外部の象限の出発点にしましょう。その結果、市場と自社の力の両方にもとづいた戦略ができあがります。
MindMeisterとMeisterTaskでPEST分析を行動につなげる
分析が役に立つのは、発見が行動につながったときです。MindMeisterのようなオンラインツールを使えば、要因ごとのブランチと影響度を示す色で、PEST分析をひと目で見渡せる場所にまとめられます。チームはリアルタイムの共同編集で同じマインドマップに取り組み、話し合いが必要な発見にはその場でコメントを追加できます。
要因ごとに1本のブランチ: 6つの要因とその発見を、1つのキャンバスで見渡せます
影響度を色分け: 高・中・低の評価を色で示し、優先事項を目立たせられます
トピックへのコメント: 同僚が、発見のすぐそばに背景情報や情報源、疑問点を書き込めます
安全な共有: チームメンバーやアドバイザーを招待し、マインドマップの閲覧・編集権限を管理できます
行動に移す段階では、MeisterTaskの出番です。MeisterTaskは独立したタスク管理アプリで、連携機能を通じてマインドマップとつながります。トピックからタスクを作成し、担当者と期限を設定しましょう。
台湾の例では、「台湾向けの表示要件を確認」というトピックが、業務責任者のタスクになります。期限は、パッケージを印刷に回すよりもかなり前に設定します。

外部の変化を明確な計画に変える
PEST分析は、ビジネスの外にある力が不意打ちになる前に、それを見えるようにします。範囲を決め、要因ごとに発見を集め、影響度を評価し、機会とリスクに分けましょう。マインドマップを定期的に見直せば、キックオフの後も長く役立ちます。
マインドマッピングを使えば、この作業を視覚化し、チームと共有しやすくなります。MindMeisterなら、ブランチごとに分析を組み立て、同僚と発見について話し合い、市場の変化に合わせて更新できます。次の大きな判断をテーマに、それを左右する外部の力を確かめてみましょう。
MindMeisterでPESTEL分析を見える化


